生命を生命たらしめるもの
福岡伸一の新刊,「世界は分けてもわからない」を読んだ.知的ミステリーの様でエッセイでもある,とても面白い本でお勧め.その中で一番印象に残ったのは以下の内容だ.「全体は部分の総和以上の何ものかである.生命は臓器に,臓器は組織に,組織は細胞に分けられる.さらに生命を分けて,分けて,分けていくとタンパク質,脂質,糖質,核酸などのパーツに分解できる.今度はたとえばタンパク質を分けていくと,その構成単位であるアミノ酸に分解できる.アミノ酸は単なるありふれた物質だ.どこにでもある.化学調味料だってアミノ酸だ.でもこれらミクロな物質がひとたび組み合わさると動き出す.代謝する.生殖して子孫を増やす.感情や意識が生まれる.思考までする.たしかに生命現象において,全体は,部分の総和以上の何ものかである.(中略)ミクロなパーツにはなくても,それが集合体になるとそこに加わる.プラスαとは一体何なのか.(中略)エネルギーと情報の流れ.生命現象の本質は,物質的な基盤にあるのではなく,そこでやりとりされるエネルギーと情報がもたらす効果にこそある.」 ほんとに面白い.部分の総和が全体にはならない.全体としての「生命」を生み出すものは,パーツではなくて「エネルギーと情報」というのだ.著者はそれを「生気」とも呼んでいる.会社組織でもそうだ.ミクロの業務の総和,または社員の活動を足し算して,全体としての「会社」になる訳ではない.会社の中に流れる人々の意識,心の持ちよう,共有される情報,一人一人のエネルギーが会社に「生気」を与えるのだ.そうすると会社が「生命体」として有効に動くためには,一人一人のエネルギーや意識を高く持つための「場」を作ることが大切だ.一つ一つのものを足していっても得られない,全体を流れるエネルギーをマネージすることが経営の本質だと思うだが,どうだろうか?