問題がないのが問題
企業活動には色々な課題があるが,その時の自社の最大の課題を一点だけピンポイントで特定することが大切だ.10年ほど前に僕が当社の社長になった時,当社の一番の問題は何かをよく考えたものだ.当時収益率は低く,創業以来25年ほどの間一度も赤字を出したことはなかったものの,どうもあまり利益が出ていない状況だったと思う.僕は会社の細かい事情を知らず,商品構成もいまいちよく良く分かっていなかったから,元銀行員の習性か,財務分析なんかを一生懸命やっていた.大抵企業は無駄が多くて,多少よく考えて経費削減をすれば,すぐにその分は利益が上がると安易に考えていた様に思う.でも数字をじっくり見ていても,経費の分析をしても,どうも無駄な経費を遣っている様に見えない.あまり高くない給料で,一生懸命真面目に働いている社員が可哀そうになる位で,これ以上経費を削るってちょっと難しいなあと思ったものだ.その時よくよく分かったのが,「当社は売上が少な過ぎる」という当たり前の結論だった.全国の顧客に訪問営業仕様とすればそれなりの「最低限のコスト」はかかる.商品も色々そろえようとすればそれなりに在庫は要るし,事務だって在庫管理・出入荷だって,それなりの陣容が必要だ.当社の場合,フル装備しているのにも関わらず,売上の絶対金額だ少な過ぎたのが利益が少ない原因だったのだ.で,僕は考えを改めて,むしろ「売上を増やすために必要な経費を使わな過ぎるのが問題だ」と逆の結論に至った.経費を使わない余りに,縮小均衡に陥って最低の固定費を賄うことでギリギリの状態になっていたのだ.それからはむしろ積極的に営業活動を行い,無料でセミナー活動を行い,売り上げを増やすために取扱い品目を増やし....,と芋づる式に行動プランは決まって言った様に思う.ところで現在の課題と言うと,「目標が低すぎること」だということに最近気がついた.それなりの率で成長し,利益水準は大幅に改善し,同業他社比較では財務状況も営業成績も相当優っているとは思うけど,どうも中途半端な実績しか残していないのは,「目標設定が低すぎた」ことが原因だったのだ.この辺りで良い,それなりにうまくやっていると無意識に感じていたのが問題で,目標を例えば現在の10倍の売上にするとか考えると,実は「問題だらけ」の会社なのだ.目標を低く持っていた時は全然問題がないと思っていたのが,目標を高く持った瞬間に実はまだまだ駄目だということに気づく.やはりピンポイントで自社の課題を特定することが大切だ.昨日までの成功は忘れて,目標を高く持ってやっていこう,そう考えて明日からまだ頑張ります.