間違った問題
ピータードラッガー(経営学者)の印象的な言葉に、「間違った問題に対する正しい答えほど始末に困るものはない。」というものがある。思わず微笑んでしまう内容だけど、まさに問題は「間違った問題設定」であることが多い。そう言えば学生時代の試験でも、出題ミスというのが一番罪が重い。受験者はまさか出題ミスなんてあるとは思わないから、その間違った問題にああでもないこうでもないと無駄な時間を費やしてしまう。出題ミスはどうしても解けないケースが多いから、「解けないはずはない、どこかに解法があるのでは」とやたら焦って時間も浪費してしまうのだ。その結果当然他の出題に対しても多大な悪影響を及ぼす。そして始末が悪いのが「間違った問題に対する正しい答え」だ。経営の場面でもある事柄が議論され問題提起されるが、実はその問題は枝葉末節で大きな問題の「ある部分」であることが多い。その「部分」を解決しようとして、実際には「全体」を歪めてしまうこともある。ちょっと専門的だが、部分最適の合計が全体最適をもたらすとは限らないという「合成の誤謬」である。簡単に言うと、各営業担当者が自分だけの成績のために自分勝手に振る舞うと、会社全体ではパフォーマンスが下がってしまうとかいう様な事例だ。「なぜ売り上げが伸びないのか」は間違った問題設定で、この間違った問題に対する「正しい答え」はもっと頑張って売れということかもしれないし、魅力ある商品開発かもしれない。そうすると営業訪問を多くしたり営業担当者にノルマを課したり、商品開発にもっと投資をしたりすることになる。でも正しくは「なぜ顧客は当社から購買しないのか」という問題設定なら、「当社に魅力を感じていないから」という答えになるだろう。そうすると「顧客が当社と付き合うメリット」みたいな話しになってくる。そうすると営業強化や開発投資ではなくて、「顧客から見た当社の魅力作り」が課題になる。問題設定を間違うと経営が明後日の方向に行ってしまうことがある。まさしく「間違った問題に対する正しい答えは始末に負えない」のだ。当社もこの点は間違わず、正しい問題は何なのかを常に考えていきたいと思います。