2000万円足らない引退後
金融審議会の「市場ワーキング・グループ」が作成した、「高齢社会における資産形成・管理」に関する報告書が物議を醸している。話題になっているので、全文をざっと読んでみたが、別にどうってことのない、当たり前の現状分析と対策提言となっているだけだ。物議を醸しているのは、「引退した後に普通の生活を送ろうと思えば、年金だけでは不足額が出て来る、その額が2000万円になる」という部分だ。金額を2000万円と明示したことや、政治家も官僚も誰もが知っていてけれど言えば損になることをずばり言ったということでは意義ある報告書だと思う。少子化に歯止めがかからず、寿命が長くなって高齢化が進み、所得も低迷が続く中、年金給付額の切り下げは不可避であることなんか、世の中の常識で、65歳で引退してから100歳まで生きても35年間ずっと国が養ってくれると思っている方が、よほどおかしいと思う。40年働いて残りの35年間は他人に養われるのだったら、年金だけで給料の約半分は税金として国に納めておかないといけない勘定になる。実際には税金は年金以外にも公共目的で使われるのだから、所得の半分は年金、残りの例えば1/4はその他の公共サービスということで、所得税は平均75%とかにしないと計算が合わない。つまり社会主義国である。毎月5万円足らないとすれば年間60万円、引退後30年で約2000万円足らないとのことだが、むしろ、月額20万円貰えて年間240万円、引退後30年で7000万円貰えることの方がよほど有り難く感じる。まあ上記の議論は別として、一番びっくりしたのは、単に事実を分析したに過ぎない報告書に対して、憤慨したり、果ては「受け取らない」と言った麻生財務大臣だ。部下が事実に基づく報告をあげて、その内容が気に入らないからと言って受け取りを拒否する上司がどこにいるのだろう。如何に(選挙前で)不都合な事実であっても、「不都合な真実」を受けてどうするのかを考えるのが上司の仕事だろうし、少子高齢化、それに伴う将来の財政、年金破綻は誰を責める話しでもない。国民が子供を産まず、医療が進化して長生きになった結果である。不都合な事実でもしっかり受け止めて、ではどうするのかということを個人で出来ること、国がやらねばならない責任に関して建設的に議論していくことが大事なのに、「本当のことを言いやがった」、「そんなことけしからん」、「そんなこと言われてももう無理」という反応は残念としか言いようがない。まあ嘆いても仕方ないので、当社こそ100年続く企業を目指し(今年50周年です)、社員全員が豊かな老後を過ごせる様、死ぬまで働かせることにしよう、あ、違った、健康でしっかり稼いで貰うことにしましょう。