『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』小林朋道著 築地書館
山の中を、お客先の従業員と歩いていた。従業員さんが、腰をかがめて何かを拾い、それをぼくにさしだした。木の葉が、手稲にたたまれて、封筒のようになっている。「落とし文です」彼が言った落とし文かと思った。しかし、あまりに小さい。オトシブミだった。オトシブミを言う虫が、タマゴを産むとき、木の葉でタマゴをつつむのだ。彼は、それを知っていたから路上にそれを見つけた。ぼくは、それを知らなかったから、ぜんぜんわからなかった。昨日紹介した本のなかの、スコトーマだ。これは、道だ、道でしかないと知っているから、そこに何かがあるとはおもわない。それを軽減するのは、知識だ。『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』小林朋道著 築地書館 9784806713753鳥取環境大学の先生が学生たちと、あるいは単独で繰り広げる動物たちとの物語。登場動物は、イノシシ、タヌキ、テン、ナガレホトケドジョウなど。こういったものが、大学の中やすぐ近くにいる。自然とは、そんなに身近にあるものか。なぜか、少し安心する。そして、おもわず回りを見回す。しかし、物を認識する能力がないせいか、何にもわからない。イノシシ、大学の近くに借りていた田んぼに出た。田んぼもただの田んぼではない。冬季湛水不耕起栽培という、聞いただけでなんとなく横着そうな田んぼだ。そこで、学生たちとイノシシ捕獲プロジェクトが始まる鳥取駅前通りのサイン、スプレーで描かれた落書きをみて、著者はタヌキを思う。タヌキは溜め糞をする。その区域に生息する複数の個体が、区域の中に数箇所、共通して糞尿する場所、つまり共同トイレをもっている。それを溜め糞という。新しくその区域に越してきた固体が、そこを利用することによって「新しく越してきたものです。以後お見知りおきを」という情報を糞尿にこめる。あるいは、少年から青年になった固体が、「そろそろいっぱしのオスになってきました。お嬢さんを募集します」といった情報を流す。鳥取駅前通のサインは、タヌキの溜め糞に近いのではないか?1500メートルの高山に生息するイモリは感動的だ。著者の動きも感動だ。