生々しい首筋のKissmarkを隠すことなく
その日もバイトに勤しんでいた
その晩のお客に際だって目を引く女性が
ドキドキしながらも普段の接客を心掛け
楽しい一時を過ごした
彼女は夏の太陽さえも嫉妬しそうな小麦色の肌に
ボーイッシュなショートカットを揺らしていた
当時の千蔵の好みをそのまま行く彼女の姿に喉の渇きを覚えた
「お兄さん、バイトは何時まで?」
我が耳を疑う艶やかな声が心に響く
『21時過ぎには終わるよ』
「今晩、予定無かったら宿泊しているマンションに遊びに来ませんか?」
予定なんてあっても断りたくなる
幸いにもこの日はバイトの後の予定はなかった
『予定はないよ』
「では、21時少し前にまたここに来ますね」
『うん、待っているよ』
彼女に手を引かれ宿泊先のマンションに向かう
『飲む?』
「飲みたいですね」
途中でコンビニに寄ってアルコールを買い込んだ
そのコンビニで見知った女性に声を掛けられた
「ハニーが会いたがっていたよ」
『えっ・・・そうなの何も言ってなかったけど』
生々しいKissmarkを刻み込んだのはハニー
「明日までいるから顔をだしてよ」
『うん・・・』
頷いてみたもののちょっと気が重かった
彼女の前だからではない
理由は・・・
キューティーハニーリターンズ
彼女のマンションの前に来た時に
「昨日は俺達と楽しんだのに今日は別の男か?」
見知らぬ男性の4、5人のグループに声を掛けられた
彼女の眉間に険しい色が浮かび上がる
一瞬にして想像の翼が羽ばたく音が聞こえた
前夜・・・
彼女はこの男達と過ごしたんだなと
真夏の夜の出来事・・・
どんな出会いもアバンチュールも
昼間の焼けた太陽に燃やし尽くされる
昨日は昨日・・・
今日は今日・・・
それが真夏の夜の夢
男達に不快感を露わにすることなく
彼女に握られた掌に力をそっと込めて
マンションのロビーに姿を消した