吐きだした息が白く染まり
まだコートの手放せない
そんな季節に彼女は僕の前に現れた
会いに来る数日前に
愚かな事を聞いていた
ただ・・・
なんで僕に会いたいのか?
それが知りたかった
会ってから確かめたらいいのに
初めて会う事への不安から
どうしても聞いてみたかった
「私が貴方に会いたいから」
『それだけの理由?』
「うん」
『たったそれだけ?』
「私が貴方に会いたい。それで充分でしょう」
そう言われたら返す言葉を知らない
「ねぇ、お泊まりになるかも」
『一緒にお泊まり?』
こんな事を聞き返す僕は
空気が読めないのでしょうか・・・
「うふふ」
意味ありげに笑う彼女
『それってエッチするってこと?』
聞かなきゃいいのにね・・・
顔も知らない
本当の名前も知らない
この時点で知っているのは
携帯の番号とアドレスと偽りのHN・・・
そして何処かに影のある声だけ・・・