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「Cast off ~小さな君のその手を抱きしめるために~」

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2008.05.20
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車を降りると

冬の目映い星空に息が白く

街灯と星空に照らされた白い息は

キラキラと澄んだ結晶のように光り輝いては

儚くその光る命を燃やし尽くしていた

凍える手のひらに白い息を吹きかけながら

駅の構内駆け込み

立てたコートの襟を降ろす

彼女の到着時間までは

若干の猶予があり

メールで到着した事を知らせた




程なく・・・

携帯が震えて

彼女からの返信を伝える

綴られた文字に視線を落とすと

もう少しで到着するから

待っていてね・・・

読み終えた文字に不思議な安心感を覚える




その気持ちを代弁するように

僕は

左手の指を小さく

そして早く動かし

東口の改札で待つことを伝えた




彼女を待つ間・・・

やはり落ち着かない

はやる気持ちなのか・・・

それとも・・・

不思議な時間が空間となり

体内時計の針の進む音を

いつもよりも足早に

ハッキリと

僕の心の鼓膜に振動させた

落ち着かない

メールでは

不思議な安心かを覚えたのに




携帯が再び振動し

彼女からの着信を伝えた

通話を許可すると

聞き慣れたハズの彼女の声が

新鮮に聞こえるし

影のある声が更に

影を落としたかのように深くも聞こえた




僕はどんなトーンで受け応えたのか?

今となっては記憶の遙か彼方・・・

僕の心臓の奏でる音に

僕の声はかき消された




「改札の外にいるのよね?」

『うん』

「後ろを向いていて」

『何で?』

「恥ずかしいから・・・」

『後ろを向いていたら解らないでしょう?』

「服装の特徴を教えて」

『後ろ姿で解るの?』

「私が肩を叩くまで振り向かないでね」

僕は・・・・

彼女に肩を叩かれるまで

駅の外に見える街の灯りを凝視した




いつ・・・

僕の細い肩を叩かれるのかと

小さな胸を躍らせながら・・・






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Last updated  2008.05.21 04:39:01
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