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2007.12.07
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とある新聞のコラム、その3です。


「環境と組織のレベルアップ」

◇選手育成が将来を決める

冷たい雨がユニホームをぬらす中、ヴァンフォーレ甲府(VF甲府)の選手たちは、甲府市にある小瀬陸上競技場の補助グラウンドで激しく体を動かした。

練習を終え、着替えのため選手たちが向かった先は、陸上競技で使う用具などが置かれた倉庫。シャワーもない殺風景な場所で体をタオルでふく選手に向かい、大木武監督が声を掛けた。「風邪を引くなよ」

VF甲府はクラブハウスはおろか、専用練習場を持っていない唯一のJ1チームで、県内の市営や大学などの練習場を転々とする日々。会場を確保してもグラウンドの使用時間が限られるため、選手たちは午前の練習を終えた後、昼食を取らずに時間いっぱい続ける場合も少なくない。

「甲府のサッカーをやりたい」と昨季オフに加入した選手がいる一方、環境の悪さを理由に入団を断った選手もいたという。降格の要因が「決定力不足」なのは明らかだが、厳しい練習環境ゆえに補強が進まなかった現状が浮かび上がる。

05年の就任時、大木監督は「J1昇格」を目標に掲げたが、フロントは「黒字ありきの経営」。その意識のズレが、環境面の向上につながらなかったとする声が強い。

FC東京からレンタル移籍してきたDF増嶋は「メンタル面では向上したが、体の面では疲労した。練習場を転々とすることでいいことは一つもない」と言い切る。

リーグ最終戦が終わり、グラウンドの照明が消えようとする中、フロント幹部が口を開いた。

「これからは、環境と組織のレベルアップをしないとだめ。いままでは抑えていた部分、特に環境と人に金を使わないと良くならない。J2降格は一度、チームを見直すいいきっかけだ」
 
明るい材料は、中学・高校生世代の台頭。下部組織の育成に取り組んで10年目の今年、ユースやジュニアユースの選手が、日本代表の海外遠征メンバーなどに初選出された。

VF甲府がJ2だったころ、県内の優秀な選手はJ1チームを目指してきたが、16歳以下の日本代表候補に選ばれた牛奥徹選手が「ユースから初めてのトップのチームに入りたい」と胸を膨らますように、最近はVF甲府に向き始めている。ビッグネームの移籍に金を掛けられない分、自前の選手育成が将来を決めるといっていい。

J1で2年間過ごしたVF甲府は「大木イズム」の下、「チーム一丸」となって戦う姿勢がサポーターの支持を受けたが、監督交代の時期を迎え、クラブ全体の来季構想はいまだ見えない。

主将の石原は「だれが監督になるかでどんなサッカーをするか変わってくる。来年のことは来年考える」と複雑な心境を語る。

大木監督は、最終戦後の記者会見で語った。「スポンサー、サポーター、選手、スタッフが一体にならないとクラブにならない」。チームを初めてJ1に引き上げた指揮官の言葉は重い。





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Last updated  2007.12.07 22:18:31
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