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カテゴリ:映画+亜細亜電影倶楽部
弱くてもろくて、誰にも知られずにひとりで痛みを抱えている
女性がいた。がりがりにやせたソフィー。彼女が図書館 で恋人となるネイサンと初めて出会うシーンが美しい。 映画『ソフィーの選択』の中で、この図書館での出会いシーン が一番好きだ。 ソフィーのなかの人間らしいあったかさが再び浮かびあがってくる 一瞬を、繊細に描いていて、好きなのだ。 この映画を初めてみたのはたしか、高校生の時・・だったように覚えている。 劇場で見たのではなく、テレビかビデオで見た。 当時はみても全然理解できなかった。どういう映画、 という要約さえできないほど。 そしてずっと見る機会がなかった。 <それからはや20年近く・・。おっそろしい> 忘れていた映画だった。が、ここのところCSで何度もかかるので いきおい眺めるようにみていた。偶然だった。 胸をつかれ、泣きに泣いた。 一度みてえっ!?と思い、それから続いて2回みた。 要約すると、ソフィー(メリル・ストリープ。この作品の演技で アカデミー主演女優賞を受賞)というおそらく30代くらいの女性が ブルックリンのアパートに製薬会社で働く研究者ネイサン(ケビン・ クライン)と住んでいた。 そのアパートに南部出身の若者スティンゴ(あの「アリー」 の弁護士事務所の経営者ジョン!ピーター・マクニコル。カレは 『ビーン』でも良かった!!)が越してくる。 スティンゴは南部の裕福な家の出身だが、小説家になりたくて ニューヨークに出てきた。そしてなぜかブルックリンのこの下宿に 住み始めたのだ。 スティンゴは、激しい喧嘩をした後、愛し合うソフィーとネイサンの カップルに興味を持ち、三人は仲良くなる。 スティンゴはソフィーに好意を持っているが、ソフィーは「ザ・DV男」の ネイサンにひきつけられている。 スティンゴはやがて、ソフィーがポーランドからの移民で、アウシュ ビッツの生き残り。ネイサンは統合失調症で、製薬会社で働いているが 本人が言っているような研究員ではないということを知る。 ネイサンのソフィーへの妄想と暴力が激しくなるなか、 スティンゴとソフィーはある日命のキケンを感じて、ふたりで逃亡する。 その逃亡先で、ソフィーとスティンゴは結ばれる。彼はソフィーに 結婚をせまるが、ソフィーはこばんむ。 その理由は・・なぜ彼女がアウシュビッツで生き残ることができたのかということ と絡んでいて、クライマックスで語られる。 ソフィーはネイサンのもとに帰る。そして 二人は心中。スティンゴは、ブルックリンをあとにする・・。 時代は1947年。人々が戦争後の新しい世界を生き抜こうとしている時。 生き疲れて命を落とした人たち、敗れた人たちの物語だ。 ソフィーの行動は、なんというか、追い詰められた生き物が もがきころび苦しみながらうごめく姿を思わせる。 彼女はとても不器用な人だ。自分にうそがつけない。 弱くて美しいごく普通の感性を持った女性だ。 もし彼女がナチスドイツの支配下にあったポーランドに生まれなかったら 流転の人生を歩まずに済んだのだろうか。・・ 私は戦争という暴力に翻弄されて、 ずたずたに傷つけられたソフィーの人生を思って泣いた。 生きる価値がない、と何度も何度も自分を責めたソフィーの夜を 思って、胸が張り裂けそうになった。 そんな狂いに狂った時の果てで生きながらえながら ソフィーは、病をかかえたネイサンをすがりつくように愛し、 その孤独に寄り添っていた。 そのことが哀しくて。でも人間ってどんなに傷つけられても、 踏みにじられても、きっかけがあれば 人によりそい愛することができるんだね・・と、ソフィー、 最後の最後で悪かったようでよかったね、と語りかけたくなった。 ソフィーは、もう私の中の「忘れられないヒロイン」だ。 原作も読んでみたい。 じっくり一日少しずつ読んでみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.03.16 00:01:37
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