夜の谷を行く
夜の谷を行く 桐野夏生 帰りの新幹線で一気読みしました内容紹介 連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。 西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。 親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。 過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、敬子は過去と直面せずにはいられなくなる。いま明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは――。啓子は何を思い、何と戦っていたのか。 桐野夏生が挑む、「連合赤軍」の真実。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・感想桐野夏生さんにしては毒が薄かったかな?でも、世俗というか市井で生きている所謂「普通の人たち」のエグさの描写には さすがってくらいに たっぷり毒が振り掛けられてましたけど。 桐野夏生さんの同年代、団塊の世代の若かりし頃の時代に対する嫌悪 嫌悪に相反する切ない情そして何より同世代の男に対する徹底的な嫌悪を「抱く女」「猿の見る夢」「夜の谷を行く」で総括したのだなと勝手に思ってます そしてその総括は「希望という慣れない感情に戸惑っている。ふと気が付くと命の気配に満ちていて、その中に浸ろうとした。」 主人公が獄中で生んだ子供が男の子であるということが男に対する桐野さんの許しの証のような気がしました これまでで一番愛おしい男を描いたと「猿の見る夢」を桐野さんが言っていたのは桐野さんの中で男に対する怒りと憎しみがこんな風に総括されたということだったのでしょうか?それはそれで喜ぶべきことなのかもしれないけど一抹の寂しさを覚えます。