エンタ○つまりは単純にいつもの冒頭のみっていつ終わるの?
ボクはズボンの後ろポケットからボイスレコーダーを取り出し再生ボタンを押すと、みんなに聞こえるようにテーブルの中央に置いた。ボイスレコーダーから雑音が流れだし、続いて聞き覚えのある女性の声とボクの声が聞こえてくる。 ボクの質問に中野さんが事件発生時前後の状況を思い出しながらはなしだす。ボクの質問が目撃者の特徴のことに触れだしたとき、誰かがつばを飲み込む『ゴクリ』という音が聞こえた。緊張が部屋を包む中、全員がボクと中野さんのやり取りを、ひと言も聞き逃さないようにしている。 質問が終わると同時に、ボイスレコーダーが沈黙する。ボクはボイスレコーダーを手に取ると、四角のマークがついた停止ボタンを押した。 一呼吸おいて、ボクは事件に安らかな決着をつけさせるための言葉を紡ぎだす。「事件を整理していく中で、ボクの頭の中にはある一つの疑問が浮かんでいました。再三、口にしていましたが、それは『毒物はどこにあったのか?』ということです。金剛寺さんが毒死したからには、誰かが毒物を部屋に持ち込み、毒物をコーヒーに混入させたのです。ですが、事件の状況を確認していくにつれ、誰もあの部屋に毒物を持ち運べるはずがないという結論がでました。きっと犯人は毒物の運搬経路さえ分からなければ、事件が迷宮入りすると思ったのでしょう。しかし、『犯人は偶然的に決定したホテルの部屋に、細工を行うことはできなかった』という事実がわかった以上、毒薬は必ず誰かがあの部屋に持ち運んだということになるのです。それがわかった上で中野さんの目撃証言を思いだしたとき、ボクはある不思議な感覚にとらわれました。それは『何かがおかしい』という違和感です。その違和感を解消するために、ボクは中野さんにもう一度目撃証言を聞いてみました…。そして、はなしを聞き終わったあと、その違和感は犯人を決定づける確信に変わりました。みなさんに自分以外の関係者の特徴を書いていただいたのは、中野さんの証言と犯人の身体的特徴の矛盾点を明確にするためです。もうお分かりだと思いますが、中野さんの証言の中で、ある人物の特徴について、明らかな矛盾がありました。それは、そこになければならないものがないという矛盾です。普通、初対面の人間を見るときに一番はじめに目がいくのは顔です。事件発生時、中野さんがボクらを観察できた時間といっても、せいぜい三、四秒でしょう。その一瞬ともいえる時間で確認できる特徴は、とても顕著なものであったはずです。それはみなさんに書いていただいたメモの一行目から三行目に当たる特徴だと思います。書いていただく特徴を五つに制限したことで、情報が取捨選択され、より印象的な特徴ほど先に書かれる結果となりました」ボクの言葉に全員が同意の表情を示しているのが分かった。そしてボクは、最後の言葉を犯人に斬りつけた。「そう、例えばそれは、土琉井さんのヒゲであり、あるいは武木くんのドクロのタトゥーとか…、または二葉さんの金髪と緑色の瞳に、にボクの顔にある傷痕とメガネであったり…、そして北野さんのホクロ…」ボクは北野洋子に鋭い視線を向けていた。北野洋子はボクの視線を物ともせず、涼しい顔をしている。