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2006.08.08
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テーマ:海外生活(7772)
カテゴリ:カナダでの仕事

前回の日記の続きです。


前回の日記に書いた患者さんと話した直後に、別の患者さんから電話がかかってきた。


「薬を取りにいくのが大変だから郵送してくれ」という依頼の電話だった。

普段ならすぐにOKできるのだけど、この患者さんの場合、「Clinical Trial」の薬だった。

「Clinical Trial」はその名の通り「トライアル」として処方されている薬で、がんセンターでは多くの患者さんを対象に色々な「トライアル」が行われている。

「トライアル」と聞くとなんだか怖そうだけど、多くのトライアルは薬自体はとっくに承認されているものが多く、その薬がどんなタイプのどんな条件の患者さんにどれくらい効果が出るのかという統計をとるようなものが多い。または薬のコンビネーションなどのトライアルもある。

トライアルの薬管理や処方する過程はものすごく厳しく監視されていて、錠剤一錠でも無くなれば「誰が何処で何を間違って一錠足りないのか」までサーチしなければならず、とっても大変。
一回の処方にもペーパーワークが多く、トライアルの薬を扱うのは本当に面倒くさい仕事だ。


この患者さんの薬は「Clinical Trial」の薬だったので、私が勝手に郵送をOKするわけにもいかず、色々な人に聞かなければならなかった。

その患者さんの住所を見たら結構近くに住んでいる人。
取りに来てくれれば一番確実だし、一番早いと思ったけど、患者さんは何としても送ってもらうつもりの様子。

最終的にClinical Trialを担当してるテクニシャンたちが話し合い、今回は送っても良いことになった。
でもやっぱり郵送途中で紛失されては困るので、普通郵便ではなくてもっとお金のかかる宅急便で送ることになった。
この宅急便代ももちろんがんセンターの負担。
患者さんにその事を伝え、住所を再確認させてもらった。


するとその患者さん、お礼を言うどころか、何だかすごく文句を言い始めた。

がんセンターのスタッフは仕事ができないだの、
前回も郵送でトラブルがあっただの、
Clinical Trial のシステムの文句だの、

結構グチグチと言われた。



まあ、文句を言う患者さんはたまにいるので、フンフンと聞いていたが、
通常患者さんが取りにくるべき薬を郵送できるように、しかも宅配してくれるように特別に配慮してあげたのに、文句をウダウダ言われてちょっと頭にきた。

しかも郵便のトラブルをウダウダ言われたけど、
それってがんセンターじゃなくて郵便局のせいじゃないの?って言いたくなるようなこと。
それに加えて「がんセンターのスタッフは仕事ができない」などと、な~~んにも分かってない人に言われてはあんまり気分は良くない。




この2本の電話の後、あたりまえだけど「世の中には色んな人がいるな」と思った。

同じ場所で治療を受けてて、感謝する人、文句を言う人。

がんセンターでタダで治療やサービスを受けれて、当たり前と思う人、恵まれてると思う人。



もちろん人はそれぞれ違うから、同じスタッフに同じ様なサービスを受けても感じ方は違うと思うし、患者さんによっては少し不便なことがあった人もいるだろうし、何よりもガンという病気と闘いながら生活している人たちだから、色々と精神的にも大変なこともあるんだろう。


でも、それでも私の働いてるがんセンターに来る患者さんたちは恵まれている人たちだと私は思う。
「タダで治療が受けられること」は「当たり前のこと」では決してないと思う。

私たちの様に、給料明細を見てはカナダ政府に怒りを覚えている人たちの税金でまかなわれているのだから。



人間って、自分が与えられているものや持っているものに文句を言いがち。
何にしても良いところよりも悪いところの方が目についちゃったりして。


例えば私も仕事の文句とか良く言うけど、
でも実際には私の仕事が欲しくても得られない人たちも大勢いるわけで、
それ以前に仕事自体が見つからない人たちだって世の中には大勢いるわけで。


「自分がどれだけ恵まれているか」ということをいつも忘れてはいけないと思う。
最初の電話の患者さんのように、自分が与えられているもの、持っているものに対して感謝する気持ちを忘れないようにしたい。

そんな事を思った久しぶりのOutpatient Dispensaryのシフトだった。



















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Last updated  2006.08.08 13:14:52
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