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Life is Unpredictable

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2007.11.14
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カテゴリ:出来事
注:今日の日記はかなり長いです。


今日のカナダでのトップニュース。

先月バンクーバー空港で起こったある死亡事故の動画が、今日メディアに公表されました。
その動画は、たまたまそこ居合わせた人が撮影したものだったですが、先週まで警察に取り上げられていて、公表されていませんでした。
なぜならば、その動画には、警察にとって都合の悪いものが写っていたからなのです。




先月のある日、あるポーランド人移民の女性が、バンクーバー空港で息子が国際線でバンクーバーに到着するのを待っていました。
7年間、ポーランドとカナダで離ればなれに暮らしていた1人息子が、ついにカナダでの永住権を手に入れ、その日ポーランドから到着する予定だったのです。

息子は英語が全く話せませんでした。
旅行もしたことがありませんでした。
国際線の飛行機に乗ったのも初めてでした。

母親は前もって息子に「荷物を受け取るところで待っててね。そこに迎えに行くから」と伝えておきました。

空港に着いた母親は、国際線の荷物受け取りのところはまだセキュリティー内だということに気付き、1時間以上待っても息子が出てこなかったので、空港のスタッフに「中にいる息子に、荷物を受け取って、移民の手続きをして、外にでてくるように伝えて欲しい」とお願いしました。荷物を受け取るところで待ってるはずだから、と。

彼女はこの後9時間も空港内で息子が出てくるのを待つことになるのですが、その間3回スタッフに「息子を見つけてきて欲しい」とお願いしに行きました。
でも結局、空港スタッフは誰も彼女のお願いを聞いてはくれませんでした。

彼女は空港内の移民局にも行って、自分の息子の名前の記録があるかを訪ねました。移民局には「ない」と答えられました。

結局9~10時間空港で待った末、息子は出てきませんでした。

もう一度、空港スタッフに息子を探してくれと泣きながらお願いしに言った彼女。
その空港スタッフは「彼はここにはいません。今日は帰って下さい。」と言ったそうです。

彼女はバンクーバーではなく、内陸のカンループスという町に住んでいます。
バンクーバーから高速で4~5時間でしょうか。
彼女は結局息子に会えないまま、その日の夜、カンループスまで車を運転して帰りました。
家に着いたのは、夜中の2時を過ぎていました。
家に帰ると、カナダの移民局から留守電が入っていました。

息子はやっぱり到着していたのだ、と分かり、彼女は一睡もせずに、トンボ帰りで朝一番の高速バスでバンクーバーに向かいました。
今度こそ息子に会えるのだと思うと、バスの中でも一睡もできなかったそうです。

そしてバンクーバー空港に着いた彼女。
空港職員から、彼女の息子は、昨日、到着後に亡くなったということを知らされたのです。

死因は、警察のテイザー(電気ショックを与える武器)による、電気ショック死でした。

当初警察は、空港内で暴力的な振る舞いをしていた男がいて、警察が呼ばれ、警察が説得しようとしてもその男は聞かずに暴力的だったため、取り押さえる為に電気ショックを与えた、と話していました。

でも今日の動画の公開で、警察の説明は事実ではない事が明らかになったのです。



----------------------



息子は、荷物受け取りのところで、母が迎えに来るのをずっと待っていました。
何時間も。

国際線で旅行をした事がある人なら誰でも、そこには一般の人は迎えにこれない事を知っています。
でも彼は知りませんでした。
少しでも英語を知ってるなら誰かに聞いたでしょう。
でも彼は英語を一言も話せませんでした。

なぜかは分からないのですが、彼はそこで何時間も待った後、
午後10時ごろに移民局のオフィス(空港のところにある、あのオフィスですね)で入国を許可され、晴れて移民になっています。
彼はお昼過ぎには到着していたので、なぜ午後10時までそのオフィスに行かなかったのかは謎です。

その前に、あんな狭い荷物受け取りのエリアに、男が何時間もうろちょろしてるのに、空港職員が何も気付かなかったのかが本当に謎です。

もちろんその間、水も飲めなければ、ご飯も食べられません。
ポーランドからドイツに飛び、ドイツからカナダに来た彼。
ものすごく疲れていたことでしょう。
緊張もしていたでしょう。
のども渇いていたし、お腹も減っていたでしょう。
そして何よりも不安だったでしょう。

結局、彼が外に出てきたのは、夜中近くでした。
9~10時間待った母親はもう「息子はいない」と空港職員に言われ、空港から自宅に帰った後でした。

長い長いフライトの後、10時間以上も空港内にいて、そして出てきたら唯一のお迎えの母親はいない。彼の精神状態は多分普通ではなかったのだと思います。
ポーランド語でなにやらブツブツ言いながら、その辺にあった小さなテーブルを持ち上げたり、コンピューターらしきものを下に投げつけたりしはじめました。
丁度、一般の人たちが待っているエリアと、セキュリティーエリアの境目の所です。(バンクーバー空港を知ってる人は分かると思うけど、ガラス張りになっている)

その近くにいた一般の人は彼を助けようと話しかけますが、言葉が全然通じません。彼女はそこにあった内線用の電話を使って、通訳者がいるかどうかを空港に訪ねますが、つながらなかった様子が動画に写っています。


そしてそこで、警察登場。
空港側から警察に連絡が行ったのでしょう。警察が4~5人来ました。
そして警察はその男になにやら言い(でも彼は警察が何を言ってるのかは分かってなかったはず)、男が両手を上げ(Give up するときや、分からないときにするジェスチャー)警察に背中を向けたところで、警察がテイザーを使って男に電気ショックを与えたのです。
動画には(私には聞こえなかったけど)警察の「もう一度撃て」という声も入っているとか。


そして彼はその場で亡くなりました。


そしてその問題の動画。
動画を見る限りでは、その男は警察に暴力を振るったりしてなく、もう最初からギブ・アップしてる感じでした。大きな警察官の男が4~5人いたのだから、電気ショックなんかを使わなくても余裕で取り押さえられたはず。
その前に、彼は警察が来てからは暴れてすらいませんでした。

警察は当初、暴れる男を押さえつける為に電気ショックを使ったようなことを言ってました。
警察は、一般の人が動画を撮っていたことに気付き、この撮影者から動画を取り上げます。撮影者は警察がすぐに返してくれるものと思っていたようですが、警察は返してくれず、撮影者は裁判にまで持って行ってようやく先週返してもらい、この撮影者がメディアに動画を公開したのです。


この電気ショックを与えた警察も、まさか彼が死ぬとは思っていなかったでしょう。
でも、テイザーでの死亡例というのは過去にもあるらしく、それだけパワフルな武器なわけです。滅多なことでは使うものではないはずです。
特にこの男は今飛行機から降りてきて、まだ空港のセキュリティーと外の境目にいる状態だから、武器など持っているわけもないのです。
そして、動画を見る限りでは、デイザーを使わなくても、簡単に取り押させることはできていたはずです。

当然ですが、警察の行動に対しては大きな疑問が湧き上がっています。


でも私はですね、それにも増して、空港職員の対応の仕方が頭に来るわけですよ。
そうやって、何時間も息子の事を心配して待っている母親が、何度も「中にいる息子に伝言をして欲しい」とお願いしたのに、誰も、彼女を助けてはあげなかったのです。ちなみに、そのエリアの空港職員が中と外を行ったり来たりするのは問題なくできるそうです。
そして最後に彼女に「息子さんはいません、今日は帰って下さい」と言った職員。彼女の息子さんのことなんか、な~~~んにも知らないのに、そう言ったんですよ。彼女が泣いて助けを求めたというのに。

空港側のメディアを前にしての会見。
あの会見してた人、空港のお偉いさんなんだけど、彼の態度もすっごい頭に来た。
メディアの「どうして空港職員は誰も助けてあげなかったのか」という質問に
「私は空港職員の1人1人の代弁はできない」と言い、
「今回の事件を、空港の恥だとは思わないか」という質問に
「思わない。毎日沢山の人が利用してて、こんな事件が起こったのは初めてだから」と言った、あのお偉いさん。
この亡くなった彼と、彼のお母さんに対する思いやりみたいなものは、この会見からは全く感じ取れなかった。
きっと、移民の気持ち、移民がどんな思いで自国を離れカナダに足を踏み入れるのか、これっぽちも分からないのだろう。

空港なのに、10時間も通訳者1人も提供できなかったの?
泣いて助けを求めてる人がいても、「あの人クレイジーだわ」くらいにしか思ってなかったんでしょ。


このお母さんは、息子にカナダがどれほど美しい国かを見せてあげたくて、わざわざバンクーバーまでのチケットを取ったらしい。バンクーバーからカンループスまでの美しい景色を、ドライブしながら見せてあげたかったらしい。
もし、彼がバンクーバーではなく、カンループスまでのチケットを取っていたら、彼は今頃カナダで第2の人生を送っていただろう。


「移民の国」カナダ。
空港は、多くの移民たちが最初に足を踏み入れる場所。
夢と希望を持って新しく移民してくる人々に、もう少し気をくばる優しさをもっててもいいんじゃないだろうか、と、ニュースを見ながら一人で怒り悲しんだ夜でした。










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Last updated  2007.11.16 02:48:08
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