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カテゴリ:本の話題
ミミズクと夜の王 たとえば、幸福っていうのはたくさんの涙や、 苦しみの上で初めて輝きを増すんじゃなかろうか。 魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。 額には「332」の焼き印、両手両足には外される ことのない鎖、自らをミミズクと名乗る少女は、 美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった、 一つだけ。 「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」 死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。 全ての始まりは、美しい月夜だった。 ライトノベルというジャンルの中で、今ひそかに 話題になっている本ということで購入して、今日 一気に読み終えました。電撃小説大賞を受賞したと いうことで、誇大広告かもしれないなぁと思いつつ たいして期待もせずに読み始めたのですが、これが いい意味で期待を裏切られた作品でした。いきなり 始まる御伽噺のような物語、ちょっと抜けた感じの する少女が夜の王にあって願うこと。それは、自分 を食べてもらうということ。彼女はどうしてその 道を自ら選んできたのか、その疑問を知りたいと 思いながら気がつけばページをどんどんと読み進めて いました。それくらいにこの物語に惹きつけられて いました。 文章の表現はそんなに凝ったものもなく、どちらかと いえばあっさりとした感じで、展開も他の冒険小説に 比べると地味な感があるのですが、それでも他の小説 にはないものがこの物語には溢れていました。それは、 とりもなおさずこのミミズクという少女のまっすぐさ と、彼女を包み込むものたちのあたたかさ。世界は 美しいものばかりではないけど、それでも美しいもの なのだと信じられる気にさせられます。この絶望の 果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語は、 心に魔法をかけてくれるような素晴らしい物語です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.02.15 20:49:40
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