灰色の空のむこうには…

僕の担当しているお店に、そのお店のフロア長が
あだ名をつけたハナ子さんがいるのですが、この
ハナ子さんというのがなかなか奥ゆかしいです。

グリーンのワンピースに白いガウンを羽織って
いるのですが、ちょっと恥ずかしがり屋さんらしく
いつも夏の演出物であるヤシの木の下で、お客さん
が来るのを待っています。スタイルは抜群で、手は
つややかに商品を指差し、目はうつぶせ加減で
いて、結構近寄りがたい雰囲気を醸し出している
ので、僕はあまり近づいたりしないですが、お店の
人みんながハナ子さんの姿にほれぼれしています。

そんな人気者のハナ子さんですが、実は僕は一緒
にダンスをしたことがあったりするのが唯一の
自慢です。それをフロア長らに目撃されたときは
赤面ものでしたが。ちょっとお茶目なところもある
ハナ子さんですが、お客さんを呼ぶ使命のために、
周りが海開きをしたので、とうとう水着を着て
店頭に立ってもらうことになりました。いや～、
お店の中で水着姿でいるというのはちょっと違和感
を感じたりしますが、季節はもう夏だということで
そのすらりとした足からキメ細やかな肌まで、
露わにしてもらいました。

やっぱりハナ子さんはちょっと照れがあるのか、
相変わらずヤシの木の下に隠れてお客さんが来る
のを待っているのですが、なかなか目を惹く姿
ながらもちょっと季節を先取りしすぎたせいか、
あまりお客さんが寄って来ず、店の中で一人浮いて
いる存在だったりしたのが見ていてかわいそう
でした。それでも不平不満を言うこともなく、
頑張って一日中立っていてくれて、なんとか夏物
商品がぽろぽろと売れたので、これからも水着姿で
頑張ってもらいたいです。


まぁ、ハナ子さんってマネキンのことなんですが…。