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テーマ:小説日記(233)
カテゴリ:探偵百傑
「うぃ~、お疲れさん~。現場検証すすんでる
か~?」 「あっ、刑事っ!お疲れ様です!」 「鑑識さ~ん、何かホシに繋がりそうなものは 出てきやしたか?」 「そ、それが…、まだ物証どころか、検証も 出来てないんです…。」 「はぁ?いったい何をやってるでい!事件が 起きてから何時間経ってると思ってるんだ!」 「実はですね…。」 「もういい!オレが検証もやってやらぁ!いったい 最近の鑑識さんはどうなってるんでぇ。」 「あっ、刑事。その先はちょっと…。」 「何言ってやがる!事件はこの先の部屋で起きた んじゃないのかい。」 「いや、しかし…。」 「しかしもかかしもあるもんかい!現場を見ない ことにはホシも挙げれねぇじゃねぇか!」 「でもちょっと中には…。」 「おらっ、どきやがれっ!お前らは捜査の基本は 現場百回だと習わなかったのかい!」 「お帰りなさいませ、ご主人さま~♪」 「は?なんでい、あれは…。」 「いや実は現場のほうはあのメイドさんが占拠して まして、我々の入る余地がないっていうか…。」 「お前ら、何をぬるいこと言ってやがる!事件が 起きたら場所を確保するのがオレらの仕事って もんだろうが!素人なんざに先を越されやがって、 オレがナシをつけてやる。」 「おう、姉ちゃん。ここはオレら、警察のシマに なってるんだが、ちょっとどいてくれねぇかな。」 「申し訳ございません、ご主人様。わたくしの仕事 が遅いばっかりにお部屋のお掃除がまだ終わってない のです。」 「姉ちゃん、人の話を聞いてるかい?ここは事件が 起きた部屋だから、オレらがシキるのが筋ってもん だろう?部外者はあっちに行っててくれないかな。」 「重ね重ね申し訳ございません、ご主人様。わたくし はのろまなカメでして、もう少しでお部屋の掃除が 終わるところなのです。ご主人様が怒ってらっしゃる 姿を見ると…、わたくし…、なんだか泣いちゃいそう ですぅ……。」 「いや、姉ちゃん、何も泣き出さなくても…。あ~、 もうどうしたらいいんだぁ!」 「もう少しでお部屋のお掃除が終わりますので、いま しばらくお時間をいただけませんか?」 「あ~、もうわかったわかった。好きにしろぃ!くそっ、 誰だ、こんなやっかいな姉ちゃんを入れたのは!」 「ご主人様、お待ちいただく間先にお風呂に入って お待ちいただけませんか?お掃除が終わりましたら、 後でお背中を流しに行きますので。」 「お~、背中か…、それもいいなぁ。仕方ねぇ、先に ひとっ風呂浴びてくらぁ。」 「……、あの鬼刑事までオトすとは、彼女は何者?」 「お待たせしました、皆様。お部屋のお掃除が終わり ましたので、どうぞお入り下さい。」 「やっとこれで現場検証が出来る。早いこと取りかから ないと刑事に何を言われるかわからないぞ。」 「お待たせしました、ご主人様。」 「そらっ、素早く検証を済ませるぞ。」 「あっ、関係者の皆様も、どうぞ警察の方々からお話が あると思いますので、どうぞお通り下さいませ。」 「いったいいつまで待たせるのよ、まったく。」 「申し訳ございません、お嬢様。」 「おいおい、オレらは事件に関係ないっつーの!」 「お待たせしました、お坊ちゃま。」 「いったい、昨今の警察機構はどうなってるんだ!」 「お待ち下さい、下手人様。お部屋にこのボタンが落ちて いましたが、このボタンはあなた様のものですね?」 「は?失敬な!何を言ってるんだ!」 「隠してもわたくしにはわかります。そのブラウスの 右腕のボタン。これがお部屋に落ちていましたわ。 これは下手人様のものですね?」 「あっ…、いやこれは…。そう、前からなくなって いたんだ!」 「それは警察の皆様がお調べになったらわかること ですから、下手人様。わたくしはお風呂に行かれた ご主人様のお背中を流しに行かないといけないので これ以上は申し上げませんが。あ~、わたしは本当に のろまなカメですから、早くご主人様のところに 行かないとお仕置きされてしまいますわ。後はよろしく お願いいたします。あ~、忙しいですわぁ~。」 後ほど、警察がボタンを調べたところメイドが指摘した 人物のものと確認、急ぎ事情聴取を行ったところ、その 人物は犯行を認めるに至った。メイドの名前は明度院 慈耶帆、本職はメイドさんながらも事件が起これば 現場に赴き、鑑識よりも正確に現場の状況を見極め、 些細な違和感も寸分違わず見つける探偵である。彼女の 現場検証能力は他の追随を許すものはないが、現場を 元通りに戻す途上に証拠を見つけるため現場の保持が 難しく、鑑識泣かせな探偵である。この後も事件の現場 にたびたび彼女が訪れることによって鑑識は検証を行おう とすると「泣き」という必殺技を使うことで誰も近づけ させず、数々の証拠を見つけることで事件の解決へと 繋がることになる。いつしか彼女の見つけた証拠は、 「冥土(メイド)の土産」と呼ばれるようになり、彼女 の仕事ぶりとは逆に彼女の手がけた事件はスピード解決 することとなる。 (参考資料)探偵百傑 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.09.08 23:44:24
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