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灰色の空のむこうには…

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2007.09.24
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カテゴリ:映画な話

アレキサンダー


死が訪れた時に
“何を成し遂げたかが大切だ”



紀元前356年、当時急速に力をつけてきたマケド
ニア王フィリッポスとその妻オリンピアスの間に息子
アレキサンダーが誕生する。やがてフィリッポスと
オリンピアスは激しく対立するようになり、権力に
執心するオリンピアスは自らの野望をアレキサンダー
に注ぎ込んでいく。両親の確執に心痛める青年アレキ
サンダーにとって、同年代の仲間たちとの友情だけが
心の平安をもたらしてくれた。紀元前336年、父
フィリッポスは何者かによって暗殺される。これを
受けて、アレキサンダーが弱冠20歳にして王位を継ぐ
こととなるのだった…。

僕の中で伝記映画を見てみようシリーズ第3弾目の作品。
「キング・アーサー」「トリスタンとイゾルテ」
ときもそうでしたが、今まで伝記映画を敬遠していたのは
戦闘シーンのえぐさから。史実とはいえ、リアルに撲殺や
残虐な殺戮シーンが描かれたりするので抵抗あったの
ですが、やはり歴史上の偉業を達成した人物の映画にこそ
事実は小説より奇なりの信実があるわけで。この映画の
主人公であるアレキサンダーは史上初めて世界統一をした
偉大な短すぎる生涯を描いた作品ということで、僕が今
読んでいる某小説に印象深く登場する征服王の真実の
姿を見たくなり、レンタルすることに。

どうしてマケドニアの勇敢な戦士たちの話なのに英語で
話しているのかという疑問はさておき、173分という
長時間の尺のためにちょっとダレてしまいましたが、僕
の中ではかなり面白かった作品です。この映画が公開
された年のラジー賞にノミネートされたのかが不思議で
仕方ないです。内容的には征服王としてのアレキサンダー
の栄光と挫折の一生を功績ではなく登場人物たちの視点
でリアルに描いたので、同性愛だのマザコンだの醜い
ところもありましたからそれで評価が落ちたのかもしれ
ませんが、僕的には価値観はさておき当時の世相をきちん
と考証していたと思うので評価はすれどもマイナスには
ならないと思うのですが。

それよりも特筆すべきなのは舞台のセット。あれほど
見ていて心躍る演出に気付いた人が何人いたのか。
エジプトからギリシアやペルシアを俯瞰するときに
出てくる古代都市の大灯台や建造物の数々。さらには
バビロンに入城したときに俯瞰すると宮中庭園やバベル
の塔が。神話の世界になぞらえて自身や人々をたとえ、
かつその偉業に思いを馳せたという部分でも古代人の
世界観をきちんと捉えていたと思います。それらの
シーンを見たときに僕の中ではかなりテンションが
上がってしまいました。

映画を見る限り、アレキサンダーの生き方には賛否
両論あると思いますが、偉大な王ほど雄大に生きた
と思える人物はいないと思います。まさしく、征服王
の名にふさわしく、覇王という偉業を成し遂げた大王
としか呼び様がないかと。将たちは東方遠征は愚考
であったと語っていましたが、彼がヘレニズム文化
を開花させたのは言うまでもなく、遥か彼方の日本
までもその影響力はあったのですから、それは素晴ら
しいことだったのではないでしょうか。神話時代に
語られた世界の果てを見たいがために、東へと戦い
を求め道を切り開いていった王、戦闘では常に先陣
に立ち恐れることなく死地へと飛び込んでいった
王の姿にみな魅せられたのではないかと思います。

ラストシーンでアレキサンダーの死後、分割された
帝国のエジプトを統治したプトレマイオスが語った
「彼の失敗は他者の成功より栄光に満ちている」
という言葉がとても印象深かったです。







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Last updated  2007.09.25 01:56:04
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