灰色の空のむこうには…

タイタニア３　旋風篇


おれだったらジョーカーを焼き捨てるね。その
ほうが面倒がなくていい。なまじ持っていると、
いつ奪われるか不安だし、それを使われて負け
でもしたら悔いてもおよばないからな。


宇宙が変わり始めたのか、それとも人類が求めたのか。
磐石だったタイタニア支配の綻びが広がる。敗戦の報復
と地位回復のため、圧倒的戦力をもって戦を仕掛けた
タイタニアだったが、ファン・ヒューリックはさらなる
策で対抗する。そんな折、タイタニア一族に内乱が…。

これまでの巨大なタイタニアに立ち向かう反タイタニア
陣営筆頭のファン・ヒューリックを描いたものが物語で
言うところの「起」の部分だとしたら、この巻で語ら
れるタイタニアのジュスランの起こした行動は「承」へ
と繋がるものであり、ぶっちゃけた話をしますとこれ
までの前巻、前々巻ともにとても面白かったのですが、
今巻はそれを遥かに凌駕するくらい物語が本格的に
動き出したという面白さがありました。

本来なら反タイタニア陣営であるファンを主人公として、
王者であるタイタニア側を描いていたため章ごとの構図
は交互に両者の立場を描かれていたのですが、この巻は
それまでの構成を覆してひたすらタイタニア側の立場
から描かれており、反タイタニアであるファンの描写は
２割程度。当初は心情的にもファンの活躍を見たいと
ずっと読み進めていたのですが、次第にタイタニアで
あることに疑問を抱くジュスランを取り巻く複雑化して
いく状況が面白く、これまで後方にいたジュスランが
ようやく立ち上がることでこれから銀河はどうなって
いくのかという先のわからない展開になったところで
この巻は終わるという最高の展開でした。

叶うことなら早くこの続きが読みたいのですが、２０年
ほど前に執筆されたこの物語は未完の作品であり、僕が
調べたところこの巻までしか刊行されてなかったという
のは、すごく面白くなってきたため続きが読めないという
のは生殺しみたいでとても残念なことで、一日も早い
続巻の発売を楽しみに待ちたいと思います。