|
カテゴリ:本の話題
人間は、ひとりひとりがまったく違った意味 の生き物。 ただ種が同じだけというコトを頼りに寄り そって、解り合えない隔たりを空っぽの境界 にするために生きている。 ――――その闇を見ろ。 そして己が名を思い出せ。 そして、魔術師は彼女を仕留めた。両儀式を取り 巻く怪異の元凶、多くの人の死を呑み込んできた男 は、式を本来あるべき形に戻そうとする。 死を体現した太極の結界。忘却された記憶を摘出 する妖精たちの舎。海に臨む倉庫に造られた魔の 庭園。……再来する、二年前の殺人鬼。 忘れられた記憶を取り戻した時、彼女は自分自身 と対峙する事になる―――。 上巻から引き続き下巻を読んだのですが、両儀式を 巡り起こっていく怪異と深まる謎、そしてその伏線 が思いも寄らない形で紐解かれていく様は、さすが としか言いようがないものでした。全てはある男が 仕掛けた掌の上での出来事だったのかもしれません が、そこに至るまでの過程は決して読み飽きさせる こともないどころか、さらなる深みにはまっていく 面白さがありました。 こうして読み終えた後でエピソードを振り返って みると、そのどれもに共通するのが何かを求めて 届かなかった者たちへの鎮魂歌のように感じられ ました。それは式ですら例外でなく、そんな届か ない者たちとの戦いの果てに求めていたモノを 見出すことの出来た式の在り方にこそ、この作品 のテーマがあったのではないかと思います。 空の境界(下) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.05.06 23:14:33
コメント(0) | コメントを書く
[本の話題] カテゴリの最新記事
|