灰色の空のむこうには…

人間に見られてはいけない
それが床下の小人たちの掟だった


父ポッドと母ホミリーに囲まれ３人で静かな暮らしを営む
１４歳の少女アリエッティ。彼らは、郊外のある広大な古い
屋敷の床下に住み、一家の生活に必要なモノを床上に住む
ふたりの老婦人に気づかれないようにこっそり借りてきて
暮らす、“借りぐらし”の小人たち。彼らの日常には危険が
いっぱい。とくに人間は要注意。もし見られたなら、そこ
から引っ越さなければならない。それが彼らの掟。そんな
ある夏の日、アリエッティは、病気療養のためにやって来た
１２歳の少年・翔にその姿を見られてしまう。しかし、好奇心
旺盛なアリエッティは、父親の心配をよそに、次第に翔に
近づこうとするのだが…。

初めてジブリ作品を映画館で見たのですが、さすがはジブリ
作品で大画面で見ても素晴らしい映像の美しさでした。特に
風景描写は美しく、それを彩るような明暗がきっちり描か
れた映像は大画面だからこそより映えるものでした。また
映像だけでなく、登場するキャラクターもなかなか個性的な
もので、アリエッティの小さな冒険ともいえるストーリーは
見ていてはらはらしながらも、禁じられた人間の少年との
交流はどこかほのぼのとした気分になれるものでした。

テーマとしてはおそらく人間と借りという立場であるその他
の生き物との共存を謳った作品だと思うのですが、ラスト
でのアリエッティたちの採った行動がその全てを表現して
いたと思います。それにしても小人たちが自分の大きさに
応じて人間の道具を目的のために巧みに使い分ける逞しさ
は見ていて面白いところでした。

純粋な子供にはその姿は見えても、大人にはその存在を見る
ことが出来ないですが、確かにそこにいたという余韻を残す
メルヘンの要素がぎっしりと詰まった物語であり、その後が
どうなったか想像させるエンディングはアリエッティたちの
物語がこれからも続いていくと思わせる、ただ出会いと別れ
を描いた作品なだけではなく今後に繋がっていくであろう
希望に溢れた物語でした。