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カテゴリ:本の話題
無銘剣対狂剣 ふふ、無駄なことよ。死ぬ機会はいくらでも ある。死に急ぐこともあるまい。 剣の長さは二尺四寸、元幅一寸、反りは七分、鍔は錆び、柄頭 の組糸はほつれ、鞘の漆も剥げ落ちた一振りの剣――。 商人の身ながら、尊攘派浪士に殺された娘の仇を討つため無銘 剣の扶けを得て、新選組の一員となった河合耆三郎であったが、 幕末の京は血飛沫の止むことのない殺伐とした闇に包まれて いた…。 前巻に引き続き、幕末維新編の第2巻を読み終えたのですが、 感想としましては1人の人物に焦点を当てた時代小説ではなく 無銘剣が流転する所有者に焦点を当てた物語という特性をフル に活かした設定となっていまして、この幕末という混沌とした イデオロギーの中を剣を持つ人物の目を通して様々な角度から 描いているために、どちらが善でどちらが悪であるのかを読者 に判断させるような、なかなか面白い物語でした。かたや佐幕派 の人物を描いていたかと思えば討幕派の人物を描いたりして、 それぞれに正義や悪を描いている上に、ちゃんとした時系列で 物語は展開していくので、幕末の様々な歴史上の事件を通史で 知ることも出来る、いい作品だったと思います。 今回の舞台は池田屋騒動から坂本龍馬の暗殺までと、幕末史を 語る上では最高のクライマックスの事件が目白押しで、史実 とは違えどその影に無銘剣の暗躍があったという発想もなかなか 面白く、中にはやるせないエピソードもあったりしましたが、 歴史上での主役級ではなくどこかで名前を聞いたような脇役 クラスや市井の人の目から見た当時の状況はこれまでにない 視点から描かれていたりして、とても興味深く読むことが 出来ました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.11.14 00:32:03
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