灰色の空のむこうには…

BALLAD 名もなき恋のうた


真一、自分が守りたいものを命を賭けて守る、
それが武士というものだ


天正２年。小国、春日の国の武将、井尻又兵衛は“鬼の井尻”
と恐れられるほどの無類の強さを誇る男。そんな又兵衛が秘か
に想いを寄せるのが、幼い頃から一緒に育った春日の美しき姫、
廉姫だった。しかしそれは、戦国の世にあっては決して叶う
ことのない、身分違いの恋だった。
ある時、合戦のさなか又兵衛は一瞬の隙から絶体絶命のピンチ
を招いてしまう。その窮地を救ったのは、どこからともなく
現われた少年、川上真一。彼は未来からタイムスリップして
きてしまったのだった。真一を連れ城へと戻った又兵衛は、
廉姫から少年の面倒を見るよう命じられ、困惑しながらも次第
に真一と心を通わせていく。そんなある日、廉姫に結婚話が
持ち上がる。相手は大国の大名、大倉井高虎。それは小国の
春日にとって願ってもない申し出だった…。

公開された当時からずっと気にはなっていたのですが、なか
なか見る機会がなかった本作。原案が「クレヨンしんちゃん」
の劇場版と、これまでの映画にはない異色の実写版へリメイク
と、どのようなストーリーか楽しみに見ましたら、その期待
を裏切らない面白さでとても楽しむことが出来ました。まぁ、
原案のほうを見たことがないのでどっちがいいとはわからない
のですが、他の人の感想を読んでいますとほとんど同じような
展開だとか。現代であれ、戦国時代であれ、日常のパートでは
人の営みというものはいつの世も同じように笑顔で溢れている
のだと感じさせる、懐かしい匂いのする良い映画でした。

さすがに舞台が戦国時代なだけあって、戦闘パートでは一転
して徹底的なリアリティ溢れる描写での戦いが繰り広げられ
ますが、ここまで内容が盛りだくさんだとは思わなかっただけ
にとても満足いくものでした。そうした丁寧に練り上げられた
物語だったのに、ラストのくだりはあまりにも淡々としすぎて、
これら一連の経験によって少年は成長していくということを
描くと思うのですが、あまり伝わらなかったような。さらには
これらの経験を真一が現代でどのように活かしたのかという
後日談もあれば完結したかと思うと、それまでが面白かった
だけにもう少し最後まで力を抜かないで描き切ってほしい映画
だったと思います。