ちいさな陽炎、または回遊するきらめき
レンズ越しのクリアな視界を外れた隅を 小さなきらめきがまたたくようにして流れていく そよ風に散る桜のはなびらのような せせらぎの踊る陽光の乱反射のような メガネをはずして すこしばかりかすんだ世界を見つめてみる ちいさなきらめきが群れをなして 目の前を横切ってゆく それは黄砂にくすんだ青空から 流れ落ちるように街へ そしてビルの壁面を急降下して ふたたび急上昇する風に乗って 空へと還ってゆく あわててメガネをかけると見えやしない ちらちらと フレームと視界の外のはざま 遠近の間のぼやけた視界の中 この春に生まれた小さな命は 戯れに空と街を回遊し やがて夜と海の闇へ身を隠す 親たちのように 深夜魚の稚魚たちは