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テーマ:小説かいてみませんか(122)
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2月13日
私の手には、ショコラの男の携帯番号が握られていた。 14日の日に、あなたのためだけにショップを開けています。夜の10時にきてください。というカードが冷蔵庫のなかのショコラの箱の中に忍ばせてあったのに気づいたのは、ついさっき。 顔が火照っているのは、強いフランボワーズリキュールの入ったショコラを立て続けに2粒食べたせいだけではないことは、わかっている。 ゆっくりとワードローブを眺める。ストレッチのきいたモカブラウンのスーツをとりだす。 ウェストが太ることを許さないデザインのそれは、いつも私が緊張したいときに身につける服。 新しいストッキングをおろして、ふくらはぎに沿わせる。こまかなダイアクロス柄が浮き上がってくる。 ヌメ革の仕事バッグをつかみ、わたしは仕事にいく。 わたしはショコラを身にまとって街を歩いていた。 「なんかきょう、すごくセクシーだね。接待でもあるの?」 のんきにチョコレートの男が聞いてくる。 「たまにはね。」 「なんか、オレ急に子供じみてみえちゃうよ。一緒にあるいているとつりあわない。」 チョコレートの男はむくれた。 「しょうがない、だって君は学生なんだし。はやく追いついてきて。」 さらにチョコレートの男はむくれた。 「あしたさぁ、ちゃんとチョコくれるよね。オレ、ひとつももらえないんじゃ、カッコわるすぎてサークルいけねー。」 私は、あいまいに笑って、そっとチョコレートの男の髪の毛の匂いをかいだ。 「いいにおい」 カカオの香りだけがいいにおいってわけでもない。 「あした、ちょっと遅くなるんだ。10時でいい?」 そういいのいいのこして、通勤電車に磨いたハイヒールを押し込んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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