『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』…N.S.M.T.が今日読み終えた本
本日読み終えた本↓中西輝政 『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』 PHP研究所 2006年構造は簡素で分かりやすい起承転結且つ口語体。ざっくり概観すると、四つのトピックス(戦後論、近代日本の戦争論、天皇及び神道論、日本文明論)からなる。普通の人が読むと、ちょっと引いてしまうかもしれない右派的言説が多いと同時に、普通の人が素直に(←これ大事)読むと「え!?今まで学校で習ってきたことと違う!」と思わせてくれる。特に印象的な部分は、戦後と神道及び天皇に関わる記述。先ずは戦後論。筆者は「60年周期論」を主張する。歴史的展開・転回は大体60年周期で起こる、というもの。私が思うに筆者の60年周期論は、全くの無根拠、非論理的、偶然の産物。しかし、面白い論点を投げかける。それは「60年経なければ歴史ではない」という視点。その視点から見ると、日米戦が終わって、やっと今日あの戦争を純粋に歴史的に見ることができる、ということになる。この視点は妙な説得力がある。と言うのも、(筆者の言に従えば)機密文書......当然、戦時下・戦後も、30~60年経なければ公開されないからだ。つまり、今まで...特に戦後50年ごろまでに公開された文書を見る際には、重大な欠落があることを意味している。それは、日本が占領下に置かれていた時代の文書は全て、アメリカの対共産主義国戦戦略に基づいて作成・改変・公開されていったという視線である。確かに、日本の戦争は太平洋戦争(中国戦線を含めると、大東亜戦争のほうが字義的に合いそうな気もするが)で終結していた。しかし、アメリカは全ての戦争をおわらせていたわけではない。第一次大戦以降~冷戦の終結まで、アメリカは、西側陣営の最先鋒として、共産主義国との戦いの中にあったのである。日本は終戦でも、アメリカは戦争状態の最中にあって、その戦略の中に占領政策がある。その戦略に基づいた文書は、冷戦終結のほとぼりが冷めてしばらく経たないと、公開されない。逆に言えば、戦後50年辺りまでに出された文書は、アメリカにとって、公開しても害のないものなのである。占領政策も、当然、日本を自国の脅威たらぬよう、そして自国の防波堤となるように敷かれたものであるということを意識せねばならない。私にとっては自明のことですが(一応、社会科の教師の資格を持ってますので^^;)、歴史を多少苦手にしてらっしゃる方々には、(良いか悪いかは措いといて)刺激的な内容かと。また、天皇と神道に関しても同様。更に、(卑怯千万な)TVのニュースが伝えない、女系天皇を容認できない理由についてもちゃんと説明してある。この点は、大きく評価できるかと。男女平等論と女系天皇、この両者が全く別の次元の話であることを分かりやすく説いてある。(ちなみに、私は女系天皇否認派です^^;)このあたりは、日本の国家としての宗教性に対して、目線を逸らさず描かれている。やはり、これは日本人として目を逸らさずに見たい点。と、ここまで肯定的な評価でしたが。しかし、ちょっとアカデミックな...きっちり根拠を説明したり、学術的正当性を説明する部分が抜け落ちてるかな?アメリカの占領政策に関しての記述は、元になる文書がどこで読めるかとか、入手法とか、邦訳とか、関連書籍とか、もっと示して欲しかったかな。読者に対して、もっと「れっきとした根拠があるから、ちゃんと見てくれ!」というメッセージを目に見える形で編み込まないと、変に偏向右翼と誤解される危険性があるような気もする。あと、感情論というか、筆者自身の感受性、美的意識に拠るところが大きい、感情の爆発が多く見られるのがちょっと...^^;現代の日本国民に、歴史的・宗教的理解力をつけてもらおうとして、書いてる本なのだろうし、読者があてられそうな表現はもうちょっと抑え目にして欲しかった...。