カテゴリ:オレステーション
佐藤正午の『Y』という小説を読んですごい感銘を受けた。
物語にかなりの感銘を受けたのもあるが、もっと大げさな言い方をすると今生きているこの世界の僕自身の感じ方が変わった。 『Y』に出てくるある登場人物はある日突然過去のある時点にに戻れることになって、その日から自分の人生をやり直すことになる。 人間誰しも過去のあの時点にもどって「もしあの時ああやっていれば僕の人生は変わったかもしれない」とか「あの時この人に出会っていれば・・」ということはあると思う。 常に僕たちは今さまざまなことを“選択”して生きている。朝起きるのも、もうちょっと寝るというある未来の1選択肢を捨てて“起きる”という行為に及んでいる。友達と会うのも他の人に会うという未来の1選択肢を捨てて友達に“会って”いるのである。 前に『クロノクロス』というロールプレイングゲームがあった。このゲームの話も主人公がある事故を境に“死んでしまった”方の世界と“生きた”方の世界とで世界が分かれている。両方の世界にはそれぞれ普通に生きている人たちがいるが、“どちらかの世界にしか”生きていない人たちもいる。それはある1時点を境に捨象されてしまった世界に本当は生きるはずった人が生きられなかったということでもある。 僕たちは“選択”をしないと生きていけない。しかし、同時に選択をすることで“捨てられる”方の未来があるとしたら・・・。もし僕が今日ある人と接点を持ったり、何かをしなければ誰かが生まれなかったり、何かが死んだりしているとしたら・・・。 そういうことを考えると“出会い”そして“運命”とはどんなものよりも貴重な産物だなぁと感じる。とんでもない数ある選択肢の中からただひとつ選ばれた奇跡。それはどんなものにも変えがたい財産であり、“死んでしまった”方の未来への鎮魂歌でもある。 僕たちは『Y』や『クロノクロス』の主人公みたいに過去へとそういった選択肢を変えに行くことは出来ないが、出来ないからこそ今を生きることの大切さがある。 毎日の何気ない行動もいろんな選択肢の中から1つ決まった行動と考えると今生きているこの世界がちょっと不思議にそして、これからどんなことがあるんだろうと希望が湧いてくる。 『Y』はそういうことを僕に教えてくれた。 今あなたの目の前にはどんな選択肢がありますか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 22, 2005 07:09:45 PM
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