ラフマニノフは巨大な手?
前奏曲嬰ハ短調 作品3 第2番 (1892) 楽譜のクライマックスこの楽譜を見て連弾の楽譜だと思ったあなた、いえいえ違います。これは独奏譜です。つまり、両手を使って1人で弾くための楽譜です。ピアノ独奏譜で三段ならまだしも、四段譜なんて、そうそう滅多にお目にかかれるものじゃございません。この曲は、1893年にラフマニノフが初めて出版したピアノ曲集「幻想的ピアノ小曲集」作品3の第2曲で、彼の作品では公式の第1曲目の前奏曲です。始めは静かですが次第に激しさを増してゆき、クライマックスでは普通の手の大きさでは到底弾けないと思われる上の譜例のような和音を要求されます。 彼のピアノコンチェルト第2番第1楽章の冒頭の和音群も普通の手の大きさではなかなか弾けませんよね。ラフマニノフは、ピアニストのなかでも巨大な手の持ち主で、12度の音程を左手で押さえることができたと言われています。言い換えると、小指でドの音を押しながら、親指で1オクターブ半上のソの音を鳴らすことができたということです。このような演奏が可能だったのは、マルファン症候群という疾患のためといわれています。 ともかく、凡人ではいっぺんに押さえられないこの和音を弾くためには低い音から高い音へ瞬時にアルペジオすることとなります。手は小さいけどどうしてもいっぺんに押さえたいという方は、次のリンクをご参考に。イグデスマンとジョーの前奏曲嬰ハ短調 作品3 第2番「こんなことできるわけないでしょ!」おっしゃるとおりです。それでも挑戦してみたい方は、ラフマニノフ前奏曲集Op.3-2, 23, 32で、楽譜を出品しておりますのでぜひご覧ください。この曲集には他にも前奏曲集 op.23 と op.32 の全曲を収録していますので、この曲が弾けなくても、もっと難しいラフマニノフを存分に楽しめます。