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街に奇妙な噂が広まった。
それは、街角に突如として現れる地蔵の噂である。 「突如街角に現れる地蔵だって?そりゃあ、いわゆる都市伝説と いうやつだな」 私がそういうと、 「私も最初はそう思ったのですけど・・・」 庶務課のももこの話はこうだった。 ------------- ある日の夕方、ももこは買物の帰り道人気のない道をアパートに 向かってとぼとぼ歩いていた。 ももこはその日沈んだ気分だった。 友人と、ほんの些細なことで仲たがいをしてしまったのだ。 そして、あろうことか友人は別れしな、ももこが一番言われたく ない言葉を投げつけて去っていった。もっともそれがどんなことか まで、彼女は言わなかったが。 いずれにせよ、そんな、心にとげがささったような気分で歩いて いたのだ。 家に向かう最後の角を曲がろうとしたときだった。 突然何かがぶつかってきた。そしてそれはももこの胸にしがみ ついてきたのだった。 一瞬何が起きたかわからなかったが、それが何やら赤ん坊のような 大きさであると気づいたとき、ももこは 「きゃ~」 あらん限りの声で、悲鳴を上げた。 そのとき、ももこの脳裏には (子泣き爺) という言葉が浮かんだ。そして猛烈な恐怖に襲われた。 「よ、妖怪っつ」 というや、ももこは気を失ってしまった。 そこから先のことはほとんど覚えていない。気づいたときは、救急 車で病院に運ばれていた。 気を失う前に最後に見たのは、それが子泣き爺というよりは地蔵に 似ていたことだ。そしてそれは手を伸ばし、ももこの胸に突っ込ん できたのだ。 記憶があるのはそこまでだ。 正気に戻るとどこも悪いところがないということでももこは家に 帰された。 その帰り道、ももこは恐怖というよりは、何か奇妙な感覚に包まれ ていた。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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