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カテゴリ:借金債務問題
多重債務に陥った個人(個人事業主・中小零細企業を含みます)が債務整理を行なう場合、クレジット・サラ金業者等の大部分が利息制限法上の法定利息(15~20%)を超えていることから、利息制限法による引き直し計算を行なう上でクレジット・サラ金業者に対して、業者との間の取引履歴開示を求めることになります。
利息制限法による引き直し計算を行なうのは、主に特定調停や任意整理による債務の圧縮のために用いられますが、取引履歴の開示については異なる部分があります。特定調停の場合には、特定調停法第12条により、調停委員会が特に必要と認めたときには業者に対して取引履歴の開示を求めることができ、業者がこれに対して正当な理由なく取引履歴の開示を拒否したときには、10万円以下の科料を科されることになります(特定調停法第24条第1項)。それに対して、任意整理は特に法律上の規定がないことから、取引履歴の開示も業者の裁量によることが多いため、取引履歴の開示を求めても全ての取引履歴を開示することが困難であるようです。 平成17年7月19日の最高裁(下記URLを参照)の判決は、クレジット・サラ金業者に対する取引履歴開示を義務付けるとともに、開示しなかった場合には損害賠償義務が発生するという点で注目されています。その理由として、最高裁は、貸金業規制法には貸金業者に帳簿保管義務を課しているとともに、長期間の貸付と弁済が繰り返す場合には交付書面を紛失することがあり得る点を指摘しています。そのため、債務者が債務内容を正確に把握しなければ不利益を被る可能性が大きいことから、特別の理由がない限り、貸金業者は信義則上、取引履歴の開示を義務付けるとともに、開示を拒否する行為に対しては損害賠償請求の対象となります。 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/8896E167CC0672B2492571240026991F.pdf 上記の最高裁判決を受けて、金融庁は貸金業者に対するガイドラインを改正して、取引履歴を借り手(債務者)や代理人に開示することを義務付けることになりました。 そもそも、クレジット・サラ金業者など貸金業者に対して取引履歴を求めるのは、債務者が債務整理を行なうに当たって、借金の現状を正確に把握するために必要であり、これをもとにして利息制限法による引き直し計算を行なうことにより、返済計画の見直しや過払いの有無のチェックを行ないやすくすることが主な目的です。現行の金融庁ガイドラインでは、取引履歴について「開示に協力する」ことになっていますが、貸金業者が開示しないケースが少なくないことから、債務者と貸金業者との間で大きなトラブルとなっています。 金融庁ガイドラインの改正は、特定調停・任意整理などの債務整理や、払いすぎた利息の返還を求める過払い返還訴訟を行なう点において、多重債務者の救済に大きな力になるものと期待されています。また、貸金業者が取引履歴開示を拒否した場合には、業務停止を含む行政処分の対象となります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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