週刊 マンガ便 小梅けいと「戦争は女の顔をしていない(5)」(KADOKAWA)
小梅けいと「戦争は女の顔をしていない(5)」(KADOKAWA) 2024年9月のマンガ便の1冊です。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの原作を、マンガ家の小梅けいとさんがコツコツと描き続けている「戦争は女の顔をしていない」(KADOKAWA)の第5巻です。 このマンガでもいいし、岩波現代文庫の原作でもいいです。まあ、お読みになっていただきたい! というのが今回の読書案内の主旨です。他には、何もいうことはありません(笑)。 戦争から、半世紀ほどたって、一人の女性が戦争を体験した女性たちに、一人、一人、インタビューして、それを記録した、ただそれだけの結果です。 もちろん、どういう問いを発し、どういう答えがあったか、取捨選択もあるでしょうし、作家なりの、作品として成立させるための取材の意図の反映もあるでしょう。しかし、そこに響いている「声」を聴いてほしいんです。それは、やはり作り事ではないとボクは思います。 何もいうことはないといいながら、メンドクサイことをしゃべっていますが、この5巻で印象に残ったのはこのエピソードです。 パルチザンの連絡係だったワレンチーナ・エヴドキモヴナ・Mという女性の告白のシーンです。彼女の夫も従軍し、行きて帰ってきましたが、捕虜になったことを糾弾され、戦後7年間も収容所暮らしをさせられた人です戦争が始まる前に軍隊の幹部を抹殺してしまったのは 誰なの?戦争が始まる前に赤軍の指導部をつぶしてしまったのはわが国の国境はしっかり守られていると国民に請け負ったのは 誰?訊きたい・・・もう訊けるわ私の人生はどこへ行っちゃたの私たちの人生は? レーニン亡き後の党派闘争を勝ち残ったスターリンの独裁への「歴史」の途上にあった戦争ですね。戦後40年、スターリンは失脚し、ソビエト・ロシアが崩壊してしまった今の時点で、ようやく、「もう訊けるわ」という声が響いています。しかし、次ページの彼女の結論はでも私は黙っている夫も沈黙している今だって怖いの私たちは怖がっている恐怖のうちにこのまま死んでいくんだわ悔しいし恥ずかしいことだけれど… アレクシエーヴィッチは勿論ですが、絵を描いている小梅けいとが、この「声の響き」を何とか伝えようとしていることに、ボクはホッとします。 この記録が日本語に訳されて10年ほどたちました。主人公たちが語った戦争から80年です。で、今、主人公たちの世界では再び戦争が始まっています。90年前に、主人公たちが振り返った、その同じ戦争を始めた極東の島国では、戦後「誰?」と問うことを忘れ、80年の歳月の果てに、歴史を振り返ることを疎んじる風が吹きすさんでいます。どうなることやらですね(笑)。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)