ピーター・モーガンPeter Morgan 「ジ・オーディエンス 」KAVC
神戸アートヴィレッジでは「ナショナルシアターライブ」を上映したり、カルチャーを開いたりしてくれていて、このシリーズにすかっりハマってしまいそうだ。
先週「アマデウス」にカンゲキして、その勢いで今週は「The Audience」。
まず、オーディエンスの意味が解らなかった。王の謁見、まあ、家来とかと出会うことだろう、という程度の知識。だからと言って、イギリスの社会や現代史にさほどの知識があるわけでもなく、ポスターの女優さんを知っているわけでもないし、もちろんピーター・モーガンが『クィーン』(原題: The Queen)の脚本家で、『クィーン』という映画は、アカデミー主演女優賞をはじめ、大評判だったことももちろん知らない。
だから、全く期待していなかった。まあ、エリザベス女王のそっくりさん女優の、地元ウケの芝居だろうと、たかをくくっていた。
スクリーンにイギリスの劇場の観客席が映し出されて、暗くなる。最初のシーンから、ちょっと意表をついている。一人の執事、ふたりの召使。椅子を並べるだけで、面白い。エリザベス女王(ヘレン・ミレン)が登場する。
「見ろや、やっぱりそっくりさん芝居やないか。」
日頃、関心があって、よく知っている人というわけではないから、あてにはならないのだが、舞台に立って、歩いて、座って、話しかけている女性が、ぼくの中の写真や映像のイメージとしてのエリザベス2世に、本当に、よく似ている。
劇場の実況中継なので、あっちの客たちの反応がわかるのだが、エリザベスと会う、首相たちについても、登場すると、とてもウケている。笑いが、起こって、それがほとんどコメディのような反応だ。
「きっと、この首相たちも似とんねや。うーん、知らんし。あっ、チャーチルや。うーん、ジーさんやな、葉巻の人としか知らんし。これはサッチャーやな。あんまり似てないのに、みんな笑うなあ。しゃべるたびに、妙に受けるな。そうか、言いそうなことを言うてんのか。嫌われとんのやな、このおばはん。」
女王の衣装や、それを年齢と一緒に着替えて見せる、女優の早替わりとか、若いときのふるまいから、老いてゆくヘレン・ミレンのうまさにも引き込まれてゆく。少女時代のエリザベスと、バーサンになった彼女の、舞台の上での二重写しのシーンの作り方も面白い。
「イギリスの客は、喜ぶんやろなあ。」
などという、第三者的な気分はとうに忘れて、舞台のとりこになっている自分が、少々照れ臭い。役者たちのあいさつも終わり、映画のエンドロールが回り始めて、驚いた。ぼくはイギリスとエリザベス女王のファンになっていた。
自国の、生きている王族の長を主役に据え、実に、堂々とその「伝記的」・「人間的」真実に迫ろうとするピーター・モーガンの脚本もすごいけど、やっぱり、演出したスティーヴン・ダルドリーでしょうね。
で、演じる役者も、それを機嫌よく見ている客たちもすごい。それを許した、エリザベス2世もすごい。この国の皇族ではこうはいかない。人間に対する、とても上等な信頼がそこにはあるにちがいない。何とも言えない、いい気分になる舞台だった。
帰ってきて、調べてみると、首相たちもよく似ていて、それぞれに評判のゴシップも満載されていたようだ。
「そりゃあ、笑うはずや。」
「そうか、サッチャーはエリザベスと同い年で、そりゃあ、言い合いにもなるな。その上、先に死んでる。女王さんも、ある意味、寂しいいんやろうな。いや、芝居やし。」
「なんか、ええ国やなあ、イギリスは。」
「ジ・オーディエンス The Audience」
出演:ヘレン・ミレンHelen Mirren・リチャード・マッケイブRichard McCabe 他
演出:スティーヴン・ダルドリーStephen David Daldry
脚本:ピーター・モーガンPeter Morgan
2018-10-18
上映時間:2時間38分 ※途中休憩あり
受賞
トニー賞2部門受賞
演劇主演女優賞 ヘレン・ミレン
演劇助演男優賞 リチャード・マッケイブ
ヘレン・ミレンさんには、こういうのもあるようです。
追記
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