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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.04.25
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​佐伯一麦 「空にみずうみ」(中央公論新社)
​​​ ​​​​​​佐伯一麦​の新しい小説​「空にみずうみ」(中央公論新社)​を読み終えました。新しいといっても2015年に出版されているわけで、すでに文庫になっているようですし、​「麦主義者の小説論」(岩波書店)​とかと出版は同じ時期、2014年から15年にかけて読売新聞の夕刊に連載された小説のようです。もう五年ほどたっていますね。​​​​

 ​本のカバーの絵が面白いのですが、​樋口たつのさん​という絵描きさんの絵で、新聞の挿絵は同じ人だったようです。単行本には、挿絵はありません。
 食卓のテーブルで夜中の二時くらいに読み終えて、しばらく座ったままボンヤリしました。
​​​ ​「空にみずうみ」​という作品の題名が、最初から、小説の構想のシンボルとして書きだされていたことが最後になってわかりますが、ここでは詳しく書きません。​​

「登場人物たちは、いったい、どこで空にみずうみを見るのだろう?」

​​ 読み進めながら、ずっと考え続けていた疑問です。読み終えてみると、その題名にこそ、しばらく立ち上がれなかった理由があったと、今、感じています。どうぞ、お読みになって気づいていただきたいと思います。​
​  小説を書いている​​早瀬​​と、草木染の作家で、編み物をしている​柚子​​という、もう中年とはいえない夫婦の日常が、春先から、次の年の三月まで綴られています。​
​​  ​早瀬の名前は、​​「コウジ」​​だったか、一度どこかで出てきたように思いますが、思い出せません。​​廸子​​の旧姓は​輿水​といい、東京育ちです。​​
  日々の暮らしに大きな事件は何も起きません。二人が出会う人たちが、その他の登場人物ですが、恐ろしげな人は一人も出てきません。鳥の声を聞き、日々の食卓があつらえられ、ちょっとした事件や、困りごとが季節のめぐりとともに描かれているわけで、読んでいてなにが面白いのかと言われれば、

​「さあ、なんでしょうね。」

​ ​と答えるよりほかにないのかもしれません。 ​​​​

​​青葉木菟(アオバズク)、画眉鳥、鶯、時鳥、トラヅグミ、雀、ジョウビタキ、カモシカ、タヌキ、蛇、クサガメ、ゾウムシ、青虫、チョッキリ、水琴窟、御衣黄、枝垂れ桜、上溝桜、山法師、欅、小楢、筍、かなかな、ニイニイ蝉、なめくじ、エダナナフシ、アメリカシロヒトリ、アシナガバチ、ミヤマカミキリムシ、紙魚、ヒメシャガ、半夏生、藍、臭木、鉢植え椿、栃、シオジ、ハンカチの木、合歓の木​​
​​​ 冷や奴、赤かぶの酢漬け、きゅうりの辛子漬け、さやいんげんのおかか和え、自家製梅干し、無花果の甘露煮、カレーうどん、冷やしきつねうどん、麩まんじゅう、鰹のたたき、スイカ、鳥ソバ、はらこ飯、栃餅、参鶏湯ふうスープうどん、しおむすび、千切り大根の梅漬、七草粥​​
​  一年の季節を巡る中で、出てきた鳥や、虫、樹木や花を上にあげてみました。今、思いだせるものを並べたのですが、知らないものはチョッキリくらいです。その次に食楽に並んだり、客をもてなしたりする料理で、食べてみたいと思ったものを上げました。​
​​​​  普通の生活ですね。この普通の生活を描写するに際して、書き手である​佐伯一麦​はいくつかの工夫をしています。​
​ 一つは、視点人物の複数化とでもいうのでしょうか。
 ​「私小説」​の手法では視点人物は、普通、一人です。作中の主人公が作家として語るというのがよくあるパターンです。三人称で書かれている場合もありますが、事情は変わりません。ところがこの小説には視点人物が二人いるのです。​佐伯​と等身大の人物である​早瀬​​以外に​廸子​​も語るのです。​​

​  二人の家庭を、立体的に構造化するために使った手法なのかもしれませんが、今まで読んだ​佐伯作品​にはなかった書き方で、現実に暮らしている、別の人間に語らせるわけですから、かなりスリリングです。​
​​  読み手にすれば、二人が同時に登場する場面で、例えば、​「あたたかかった」​というような言葉が主語なしで使われると、​「えっ?」​という疑問と、その場が​「ことば」​を生みだしているような不思議な錯覚を生みます。
 それにしても、​佐伯一麦​が、​「私小説」世界​から離陸し始めている印象は、なかなか興味深いのです。​
 
二つめは、新聞小説という執筆の条件を、作品の中に取り込むことによって、読み手の読書の印象を重層化するとでもいえばいいのでしょうか。
 小説の後半に前半で読み終わった部分を書いている作家が登場します。時間をずらしたトートロジーの世界で、読み手は不思議な臨場感を味わうのです。作家が、書いている自分自身を書く。読者は、今、書いている時間を読むわけですから、現場に立ち会っていると錯覚する、そんな感じですね。
 
​三つめ​​複数の時間​を、同時に書き込んでいるということです。
 カモシカ騒ぎの話の中で、​早瀬​は誰も来ない高台でひとりの​少年​と出会います。さびれた山中の出会いを不思議に思った​早瀬​​少年​に声をかけます。​少年​は噂になっていて、一度出会ったことのあるカモシカに出会いに来たことを告げます。 
​​
​​「また、シカサブロウがいないかと思って」
「シカサブロウ?」
「カモシカ。前にこのへんで見つけたの」
「えっ、カモシカみたんだ」
 早瀬が驚くと、、男の子は得意気にうなずいた。
「一緒に見つけた大人の人が、たぶんまだ子供のカモシカだろうって。一頭しかいないから、親からはぐれてしまったみたい。それで、ぼく、シカサブロウって呼んでいるの」
 シカサブロウは、漢字で書くなら鹿三郎だな、と早瀬は思った。
「でもどうして鹿太郎や、鹿二郎じゃないんだ」
​「ぼく次男だから、弟がほしくて」
​​    ― 略 ―​​
​「あ、キビタキの声だ」
相変わらず囀っているのを聞いてシン二郎君が言い、あたりを見回した。
「そうだね。よくわかったね」
​「だって、ぼく、前にいた県の鳥だから知ってる」​​
​​ この​​少年​​が、ここで、一人、はぐれたカモシカを、弟を慕うように探している姿の中に、この小説の​2014年​という現実の時間の底に流れている、もう一つの時間が顔を見せています。東北の震災から三年という​大きな時間の流れ​です。​
​​ ​早瀬​​には​早瀬の三年の時間​が流れたのですが、この​​​少年の過ごした三年の時間​​​、具体的な境遇や友達について、読者が言葉にして聞くことは、つまり作家が小説として書くことはできません。しかし、この​少年​​が、なぜここにいたかということこそが、この作品が描こうとしていることじゃないかという印象が浮かび上がってきます。
 作品は最後にこんな詩を引用して幕を閉じます。​​​
息子はどこかの墓に眠っている
でもわたしにはどこだかわからない
母親が息子を
みつけられないでいるのだから

神の小鳥たち、どうか息子のために
さえずってあげて
母親が息子を
​見つけられないでいるのだ から​
 小説の中で、小鳥が囀り続け、二人の男女は耳を澄まし、木々や花々、小さな虫やドングリや栃の実に、コンクリートの壁から聞こえてくる騒音や、喘息の発作や手首の痛みに一喜一憂しながら、静かに暮らしています。
 作家は神の小鳥や花々を描きたかったのではないでしょうか。
 ​​​​ともあれ、佐伯一麦という作家が新しい書き方に挑みながら、震災後の文学として、
鎮魂の結晶化!
​ を、見事に成功させた作品だと思います。どうぞお読みください。(S)​
追記2019・11・24
 佐伯一麦はこの作品とほぼ同じ時期に「渡良瀬」という作品を完成させています。感想はこちらをクリックしてくださいね。「渡良瀬」​​​​
​​​​​

追記2022・03・26
 最近、佐伯一麦「アスベストス」(文藝春秋社)​という、新しい作品を読みました。その感想を書きあぐねて、昔の作品のことを考えています。もう少ししたら感想をアップしますが、やはり胸に迫る作品でした。


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最終更新日  2024.09.05 12:23:40
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