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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.04.27
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​​​ロブ・ライナー 「記者たち Shock and Awe」シネリーブル神戸​​​​​​​​ 
​​ 2019年、春。四月の二週目に入って、映画館が遠くなってしまった。咲き始めた団地の桜や芽吹いてくる木々に気を取られていたこともあるのですが、徘徊生活二年目の億劫な倦怠感が、もう一つの原因ですね。​​​
​​ 「ヤレヤレ、どこに出かけようの毎日がまた始まるなあ・・・」​
​ ​​これではいかんと気を取り直して、たどり着いたのがシネ・リーブル神戸です。​​
​観たい映画はロブ・ライナー「記者たち」でした。​​アネックスという大ホールでの上映です。とはいいながら客は少なくて、予約でど真ん中を選んで座ってみると、なぜか、少ない客が周りに群がって集まっています。「これはいかん」と小さな群衆から前の方へ逃げ出して、ほっとしてポットのコーヒーで一休みです。​
​​​ ロブ・ライナーといえば、ぼくの中では「スタンド・バイ・ミー」ですかね?アメリカの60年代の青春を描いた好きな映画ですね。主題歌(?)も好きです。今回は「イラク侵攻」の内幕を暴いた社会派ドラマのはずです。チラシを読みなおして、ご機嫌を直していると、暗くなって、映画が始まりました。​​​
​ 画面で車椅子で軍服姿の黒人青年が証言しています。公聴会のようです。なぜか、画面で静かに話している人物の声が聞き取りにくいので気付きました。誰もいないはずの後ろの席からシャガシャガ、シャガシャガ菓子袋の封を切る音が響いていたのです。​
 「エッ、なんで?」
 ちょっと後ろをうかがうと、暗くなってから入ってきた人が座っているらしい。
​ 「なんでやねん!こんな広いホールで、一人ぼっちの席選んだのに。そこに座らんでもええやら。いやがらせか!」​
 どうしたことか、シャガ、シャガが止まりません。しばらくイライラしながら辛抱していましたが、我慢できなくなって指定席なんて言ってられるか(いや、もう移ったやろ、一度)」と、再び席移動です。ああ、スクリーンの正面からどんどん遠のいていきます。
 ヤレヤレ・・・
​ ようやく落ち着いて鑑賞再開です。映画は堅実で丹念に作られていました。志願してアフガニスタンからイラクへと転戦した兵士。事実を追い続ける小さな新聞社の編集部。「奇をてらう」という感じのシーンは全くない。そういう印象の作品でした。​
​​ 柳沢協二という、自衛隊イラク派兵を統括した人が書いた「検証 官邸のイラク戦争」(岩波書店)という本がありますが、その中でこんなことを言っていたことを思い出しました。​​
 ​​一般に民主主義国家の戦争は、議会の明確な支持を条件としている。日本においても、防衛出動や海外派遣に対する国会承認の制度がある。だが、議会や国民に提示される情報は、政府が提示したい情報に限定される。意図的かどうかは別として、偏った情報を前提とすれば、議会のチェックは形骸化する。私の経験から言っても、政府による危機管理は、すぐれて政権の危機管理であり、政権の判断を正当化する方向性を持たざるを得ない。それゆえ、情報の偏りをただすメディアの責任は重い​。​​​
​ ​​「記者たち」とは、「ナイト・リッダー」という、小さな新聞社の編集部にいる人たちであり、その家族たちです。彼らはあきらめないし、なんといっても、プライドを捨てない。 ​​​
​​​​​ 「ワシントン・ポスト」、「ニューヨーク・タイムス」といった大手のメディアは「大量破壊兵器の存在」という事実無根の大統領発言を検証することなく、「正義の戦争」を支持する報道を続けています。「アフガニスタン空爆」から​「イラク侵攻」​へと「アメリカ・ファースト」を演じることで、9・11に対する大衆的憎悪に乗じたブッシュ人気を、結果的にはメディアも煽っています。それは、この戦争を支持した、ぼくたちのこの国の政府も同じです。​​​​​
​​ その中で、執拗に事実を探り続け、すべてが終わった現在からみれば、特ダネ中の特ダネである「イラク疑惑」を暴くのです。しかし、結果的に戦争は遂行され、志願した青年は両足を吹き飛ばされて、やっとのことで帰国した現実があります。​​
​​​​ この作品は「戦争」に対してはっきりノー!を主張していると感じました。監督のロブ・ライナーは編集長として事実究明を指示し、戦争報道のプロ「宇宙人ジョーンズ(トミー・リー・ジョーンズ)」と二人で、若い記者たちをフォローし、激励する役を演じているし、若い記者の一人は「スリー・ビルボード」の署長だったウッディ・ハレルソンですが、ちょっと武骨で、へこたれないタフな感じがいいですね。​​​​
​​​​ 中でも、心に残るセリフがありました。
​​「アフガニスタンがどこにあるのか知っているの?」​​
​ 大衆的盛り上がりの中で、「かっこいい!」を求めて、​戦争に志願しようとする少年、映画の冒頭、車椅子に乗って登場した青年ですが、彼に向かってと諫めようとする母親の、このセリフに、ロブ・ライナーのこの映画に込めた、まともなメッセージが響いていて、印象に残りました。​​​​​
 「こうなったら「バイス」も見んとなあ。」
  明るくなったホール、さっきの席の後ろには、もう、誰もいませんでした。
 「イラチで、行儀の悪いやっちゃなあ。さあ、神戸駅まで歩くか。」
 監督 ロブ・ライナー Rob Reiner

 製作 マシュー・ジョージ  ロブ・ライナー  ミシェル・ライナー  エリザベス・A・ベル
 脚本 ジョーイ・ハートストーン
 撮影 バリー・マーコウィッツ
 美術 クリストファー・R・デムーリ
 衣装 ダン・ムーア
 編集 ボブ・ジョイス
 音楽 ジェフ・ビール
 キャスト
  ウッディ・ハレルソン(ジョナサン・ランデー)
  ジェームズ・マースデン(ウォーレン・ストロベル)
  ロブ・ライナー(ジョン・ウォルコット)
  ジェシカ・ビール(リサ)
  ミラ・ジョボビッチ(ヴラトカ・ランデー )
  トミー・リー・ジョーンズ(ジョー・ギャロウェイ )
  ルーク・テニー(アダム・グリーン )
  リチャード・シフ
 原題 「Shock and Awe」  2017年 アメリカ 91分  (記事中の画像はチラシの写真です)  2019・04・15・シネリーブル神戸no2
​追記2019・09・27​
​​​​​​​ 柳澤協二が指摘する、政権のご都合主義が、この国の合意、総意、であるかのごとくまかり通りはじめています。
 NHKをはじめとするメディアが、政権の判断を、あたかも客観的真実であるかのごとく報道しています。いつの間にか「ことば」を変える、起こっている大災害を報道しない。何の仕事もしていない政治家をタレント扱いで取り上げる。
 全体主義「徴候」としてなら、もう始まっています。ということは「戦争」はすぐそこに来ているということかもしれません。
 ぼくは、この国に限らず、「記者たち」のプライドに期待しています。​​
 ところで「バイス」の感想は題名をクリックしてみてください。​
追記2022・11・16
 コロナ騒ぎが始まったころの映画館通いは、やっぱり不安でした。この記事から3年たちましたが、コロナ対策は迷走を続け、今度はロシアが戦争をはじめ、香港の民主化運動は圧殺されています。そうこうしているうちに、
役に立たないマスクを配った人物が銃撃され、死亡するという驚くべき事件まで勃発し、権力の裏にはインチキな宗教団体が跋扈していることまであからさまになってきました。流動化する世界はとどまるところを知らなという様相ですが、これから、どっちに流れていくのでしょうね。
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最終更新日  2024.10.03 10:06:00
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