ゴジラ老人シマクマ君の日々
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シマクマ君
シマクマ君のゴジラブログへようこそ。今日は図書館、明日は映画館。あれこれ、踏み迷よった挙句、時々、女子大生と会ったりする。大した罪は犯さない、困った徘徊老人。「週刊読書案内」・「先生になりたい学生さんや若い先生にこんな本どう?」・「映画館でお昼寝」・「アッ、こんなところにこんな…わが街」とまあ、日々の暮らしのあれこれ、いたって平和に報告しています。
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大岡信「古典を読む 万葉集」・「詩人・菅原道真」(岩波現代文庫) 「折々のうた」の大岡信が2017年に亡くなって二年がたちました。以前こんな案内を、高校生に向けて書いたことがあります。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ 大岡信(おおおかまこと) この名前を聞いてピンと来る人は新聞をよく読む人かもしれませんね。朝日新聞朝刊紙上に、さあ、何年になるのでしょう。1979年1月から2007年3月まで連載された「折々のうた」の著者ですね。詩や和歌を一般の人にわかりやすく紹介する200字コラムの嚆矢とも典型ともいうべき仕事ですね。 岩波書店から新書化されていて、全部で21巻あります。途中に休載期間があって「折々のうた」(岩波新書)のシリーズ11巻と「新 折々のうた」(岩波新書)のシリーズ10巻の合計21巻です。 他に朝日新聞社が単行本、文庫本でもシリーズ化していて、それぞれよく読まれてきました。ぼくが大学生だった頃からの連載で、明治の訳詩とか古典短歌とかを歯ざわりのよい箸休めか新鮮なデザートのように、毎朝紹介してみせる大岡信の腕前に感心したものです。 大岡信は読売新聞の記者をしながら詩人として世に出た人です。「自分の感受性くらい」(花神社)の茨木のり子と「ことばの力」(岩波ジュニア新書)の川崎洋という二人の詩人が1953年に始めた詩誌「櫂」のグループに谷川俊太郎とかと参加し、その後、明治大学で教えながら素人にもよくわかる語り口で日本の詩や短歌、詩人、歌人を様々に論じたり紹介してきた人なのです。 特にアンソロジーを得意としていて、「私の万葉集(全5巻)」(講談社現代新書)、高校生や中学生向けの「星の林に月の船」(岩波少年文庫)、現代詩なら「戦後代表詩選(正・続)」(思潮社・詩の森文庫)というふうに、「折々のうた」のほかにもアンソロジーだけでも膨大な著作があります。 最近、「折々のうた」という短いエッセイは単なる余技ではなくて、調べ尽くして書いていたのだなと気付かせてくれた評論集を読みました。 「古典を読む 万葉集」(岩波現代文庫)、「詩人・菅原道真」(岩波現代文庫)の二冊です。 万葉学者として有名な中西進という人の「旅に棲む-高橋虫麻呂論」(角川書店)という本を読んで、我ながら、あまりの無知蒙昧さに情けなくなり、ひさしぶりに手に取ったのが大岡信でした。 というのも、この人文章は国文学の常識を教科書風にきちんとおさらいしたうえで論が進んでゆくのです。言ってみれば先生なのですね。国文学の和歌や詩に関して自分の“おばか”加減に困ったときの大岡信頼みとでも言いましょうか。だから下手な口真似のぼくの授業の講釈なんかより、この人を直接読むほうがいいというわけです。 とくに「古典を読む 万葉集」のほうは、授業ではほとんど触れることがない万葉集の和歌について、初期から代表的な歌人をたどって解説しているのでとてもわかりやすい。和歌も解説付きなので解釈に困って立ち往生ということもきっとないでしょう。 まあ、やっぱり万葉集ということになると、代表歌人柿本人麻呂論という側面もあって、「古今和歌集」の代表歌人紀貫之と比較して論じているところなどは、なかなか刺激的でした。 古代から平安時代にかけて、和歌とはなんだったのか、歌人とは何者だったのか。時代と文化の関係ですね。ついでに、以前紹介した藤岡忠美先生の「紀貫之」(講談社学術文庫)に手を出してみようと考える人がいたりすると、ちょっと嬉しいですね。 「詩人・菅原道真」のほうは歌人というより漢詩人というべき菅原道真を論じているのですが、時代はもちろん万葉集の時代ではなくて、古今和歌集の時代の人。国風文化が生まれてくる歴史的な現場での、翻訳の話として僕はとても興味深く読みました。 古代の知識人の中に漢詩、「からうた」と読むべきかもしれませんが、唐、中国ですね、それと和歌、日本との相互の交流、翻訳という時代があったのですね。そこでは、何よりも日本の歌の中国の詩への翻訳という方向が面白いなと思ったのですが、諸君はどう考えるのでしょうね?是非、お読みください。 (S) (初出)2008/09/02 追記2022・10・22 読み返してみると、このブログを始めた2019年に、それ以前のブログに載せていた記事を再掲載したので、記述が古いことがわかりますが、内容そのものについては、古びているとは思いません。ただ、大岡信の「折々の歌」のシリーズが、例えば、高校生や大学生に、今でも読み継がれているのかどうかはかなり怪しいと思います。若い人たちが、古典的な教養と呼ぶべきものを失い始めたのは、ぼくたちの世代からだとは思いますが、「百人一首」を暗唱させることをゲーム化して競わせることが流行っている現在ですが、クイズの答えとして和歌は知っていても、こころの糧としての和歌には関心がないのが実情のようです。 国語教育のIT化とかが推進されているようですが、役に立つ国語には古典的な情操の涵養は含まれていないようで、要領のいい官僚の考えることは恐ろしいと、結構、マジに憂えている今日この頃です。
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