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カテゴリ:読書案内 ジブリの本とマンガ
鈴木敏夫 「禅とジブリ」 (淡交社)
この本を案内しようとと思ったのは表紙をスキャナーで写真にとってみると、手抜きの構成のようなんだけれど、これが結構面白い。たった、それだけ。「禅とジブリ」、この写真ネ! 鈴木敏夫という人は、知る人ぞ知る「スタジオジブリ」のプロデューサー。宮崎駿や高畑勲の仕事を支えてきた人。もともとは徳間書房の編集者だったらしい。その鈴木敏夫が三人の僧侶と出会う。 ぼくは、基本、この手の学者やタレント、経営者の「人生論系の本」は読まない。だって、めんどくさいじゃないか。世間では、本屋の棚を見る限り氾濫していて、よく読まれているらしい。この本も、そういうめんどくさい系の一つであることは間違いないが、ジブリの鈴木敏夫という名前に惹かれた。 読みはじめると、宮崎駿が2018年現在の、今、準備している作品があるらしい。ここ数年、社会現象化しているあの「君たちはどう生きるか」だという。 やれやれ・・・ 「プロデューサが参禅のおしゃべりで、監督は超ハヤリの人生論かよ。」 なんとなく、時代の黄昏を感じて、ついでに思い出に浸ってしまう。 ジブリの、宮崎駿や高畑勲のアニメーションは「風の谷のナウシカ」以来ずーっと、我が家ではハヤッテいて、そういえば、ドアを開けて入ってくると暗いだけの玄関の壁ではナウシカとチビのオームが、あの頃からズット散歩している。「ナウシカ」はジブリ以前の作品で、「天空の城ラピュタ」から「トトロ」がスタジオ・ジブリの仕事の始まりだったと思う。 今は30歳をはるかに超えている、ヤサイクンやサカナクンたちが小学生だった。みんなでトトロの歌を歌っていた。 あるこう あるこう わたしはげんき♪♪ あるくのだいすき♪♪ これって人生論じゃないよね。でもまあ、徘徊ソングなわけで、「君たちはどう生きるか」って、まあ、宮崎駿がどう描くか、やっぱり興味はあるけど。 さて、その鈴木君が禅宗のお坊さんと会ってしゃべる。黙って座禅を組めばいいようなものだが、それでは本にならないからおしゃべりをすることになる。登場するお坊さん、どなたの名前も知らないなと思っていると、最後の一人は玄侑宗久、芥川賞作家である。そこにこんな会話がある。 鈴木:高畑さん、宮さん、この二人を見ていて、年齢を重ねても、二人共いまだに映画を作りたい。ぼくの想像では、たぶん死ぬまで「枯れる」なんて考えない人たちだと思うんですよ。ギンギラギンのまま。 宮崎駿の引退宣言については「問答後談」のなかでこんなことを書いている。 宮崎駿は「今、ここ」の人である。加藤周一さんに倣うなら、明日は明日の風が吹くし、昨日のことは水に流す人だ。(略)だから、引退宣言を繰り返してきた。 高畑勲は、この本が編集されている最中、2018年四月五日に亡くなった。 宮崎駿は、新作アニメに没頭しているらしい。三月二十一にに書かれたプロローグに、三年がかりで出来上がった絵コンテに対する鈴木敏夫の批判と宮崎駿の反応が書かれている。 「‥・・・詰め込み過ぎですね」一か月半の後、新しい絵コンテが完成し、それを読み終えた鈴木は、その時の心境をこう書いている。 目の前の宮さんは、天才以外の何物でもなかった。七十七歳にして成長を続ける、この老監督のどこにそんなエネルギーが残っていたのか、ぼくは、宮さんのその強靭な精神力に対して恐れおののいた。 読み終えて、プロローグに戻ってみる。宮崎駿の新作を心待ちにする気分になる。今度こそ、最後の作品になるかもしれないんだから。 それにしても、表紙の写真の僧と鈴木敏夫の配置、やっぱり、かなり工夫されているんじゃないだろうか。 2018/12/17 追記2019・07・13 今現在、宮崎駿の新作は、まだ公開されていない。数年かけての完成らしいから、まだまだなのだろう。それにしても、結局、仕事に戻ってくる宮崎駿はエライ! にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.02.22 11:38:15
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