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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.08.14
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カテゴリ:映画 韓国の監督
​ユン・ジョンピン「工作・黒金星と呼ばれた男」

​​ ​​​​​​真夏の​元町映画館​​を連日満席にしている映画があります。​この作品です。韓国軍事政権暴露第三弾「工作」。おそるおそる見ましたが、拍手喝采の気分で見終えました。
 1980年全斗煥(チョン・ドゥファン)のクーデターから光州事件へと続く動乱の現場と市民の闘い​を描いた​「タクシー運転手」​。軍事政権下、民主化弾圧政策のなかで起こったソウル大学の学生の拷問死の真相を描いた​「1987、ある闘いの真実」​。それぞれ
全斗煥による民主化弾圧政策の始まりと終わりを見事に暴いて見せた韓国映画ですが、今度は北朝鮮の核開発をめぐる、南北のスパイ戦を、1997年金大中政権誕生に至る韓国軍事政権の秘話の暴露映画として描く快作を登場させたのです。
 ​​一連の韓国社会派映画の特徴は、登場人物の印象的で個性的な描き方だったのですが、この映画も、主役である二人の俳優の演技の味わいが、まず、申し分ないと思いました。​​
​​ 陸軍情報少佐の身分を隠し、工作員「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」ことパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)の、軽薄と冷静を演じ分ける二重人格ぶり。​​
​​ 対するのは、北京に駐留し、「金王朝」のために外貨を稼ぐ、朝鮮民主主義人民共和国対外経済委員会「リ所長」(イ・ソンミン)でした。工作員パクに対して、疑いから信頼へと変化する真情を、あたかも「目の輝き」で演じてでもいるかのような、イ・ソンミンの動かない表情の存在感。この二人の「演技戦」がこの映画の一つ目の面白さでした。​​
​ 二つ目は、なんといっても平壌の風景ですね。韓国映画が北の国内をロケできるはずはないわけですから、セット撮影であることは間違いないでしょうが、知らないとはいえ、そのリアルさにはポカンとしました。ついでと言っては失礼ですが、金正日という実在だった人物のメイキャップも、なかなかでした。
 さて、この映画には、もう一つ見逃してはならない面白さがあると思いました。
 映画は、金大中による政権獲得という韓国現代史の重要な転換点に実在した、旧勢力の陰謀の暴露という、以前の二つと同じ構造の歴史ドラマということができます。しかし、それだけだったでしょうか。
 この映画で主人公にあたる工作者二人には、それぞれの国家の権力当事者にとって、自分たちが使い捨ての駒であることは自明の前提でした。彼らの決死の演技合戦は「駒」として生き延びるために必然でした。ところが、その二人が、互いの演技の裏に、それぞれが信じていて、且つ、共通する「義」が存在することを発見するのです。
 映画の結末は、それによって大きく動きます。しかし、ぼくはそこに、この映画の結末を越えた監督ユン・ジョンビンの夢を感じました。


​ 韓国国内の民主化を支えようという意志を強く感じさせてきたのが、前記二つの作品だったとしたら、この映画は未来への夢を、静かに暗示したところに新しさと面白さがあるのではないでしょうか。
​​
監督 ユン・ジョンビン
脚本 ユン・ジョンビン  クォン・ソンフィ
撮影 チェ・チャンミン

音楽 チョ・ヨンウク
キャスト
   ファン・ジョンミン(工作員パク・ソギョン)
   イ・ソンミン(リ所長)

   チョ・ジヌン(韓国国家安全企画部室長チェ・ハクソン)
   チュ・ジフン(北朝鮮国家安全保衛部チョン・ムテク)
原題2018年 韓国 137分  2019・08・07元町映画館no16

追記2022・09・20

​​​​​ 映画スターファン・ジョンミン誘拐という設定の​「人質」​という映画を見ていて、主役の映画スターは、この「工作」という映画の工作員を好演していた​ファン・ジョンミンのことで、なおかつ当人が主役を演じていることに、欠片も気づきませんでした。この感想では手放しでほめている、当の俳優に、全く気付かないというのは、イヤ、ホント、ひどい話ですね。
 数年前から、退職徘徊老人のヒマつぶしで映画館通いをしていますが、哀しいのは、こういうことがふえたことですね。
 二十代に映画にかぶれていたころから、スクリーンに登場する映画スターに肩入れしてみる方ではありませんでしたが、ここ数年は、全く覚えられません。今回の「人質」も、主役ファン・ジョンミンの表情や物腰がストーリーを引っ張る作品で、それにどっぷりつかって面白かっただけに、彼を以前見たことがあることに期近なかったのは不覚でした。​

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最終更新日  2023.06.27 09:52:50
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