スティーブン・スピルバーグ「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」 パルシネマしんこうえん
メリル・ストリープを初めて見たのは40年前です。「クレイマー・クレイマー」でしたね。ダスティン・ホフマンと裁判して、勝って、子供を連れて行ってしまいました。叱られそうな感想ですが、ヤナ女だと思った記憶があります。まあ、ぼくも二十歳でしたからね。そのメリル・ストリープが、堂々たる恰幅のおばさんになっていました。
「そのあとの十年間ぐらいは見てたけど、こうして映画館のスクリーンで見るのは、本当に久しぶり。まあ、今では名前も見かけも大女優なんですねえ。でも、イイねえ。雰囲気というか、素人ぽさというか、かわらんねえ。なんか、優柔不断な顔してて、キッパリ!っていう感じは、まんまやなあ。そういうのって、変わらないもんなのかなあ?あれって、あっちの人が見ても泣き出しそうに見えるんかなあ?そう見えるのは、ぼくだけ?」
トム・ハンクスは、たぶん、映画館で観るのは初めてです。
「なかなかええね。力みそうなところで力まない。ほかの役者のムードもええな。」
そういえば、座った時には、これがスピルバーグの映画ってことにも気づいていませんでした。始まって、タイトルとか字幕見てて気づいた次第です。
「えっ、これってスピルバーグの映画なの?ああ、そう。」
ウトイにもほどがあるかも。
実は、上映館のパルシネマは粋なことをやってて、「ペンタゴン・ペーパーズ」を見て「ザ・シークレットマン」をどうぞという二本立てのプログラムです。
で、ニクソンがウォータゲートで失脚するというオチに「ナルホド、ナルホド」と納得して帰るようになっていた番組編成らしいですね。
ぼくは順番を逆に見て、忘れていたウォーターゲート事件を予習したわけで、その結果、この映画の中で、マクナマラ国防長官が友人であり、ワシントン・ポストの社主でもあるキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)を説得するシーンの「ニクソンはクソなんだ。」というセリフが超リアルに聞こえるとか、この映画には大統領補佐官なんて出てこないのに、なんか、さっきの映画で暗躍していた「あいつ」が、裏で何かやってそうな気がずっとしているという珍現象を経験してしまった。
「うん、知ってる知ってる。だって、クソのニクソンが何をしているのか、補佐官もクソやし、さっき見たし。」
「んっ?なんか変やど?」
そういう感じ。ともあれ、映画は面白かったですね。
スピルバーグが作る映画は「激突」・「ジョーズ」からファンで、ずっと観ていたと思っていたのですが、まあ、勝手な思い込みで、この二十年の作品はまったく観ていなかったのです。
とはいいながら、ヤッパリというか、さすがというか、ぼくが勝手に「スピルバーグ的」だと思っている、「シーンの組み合わせのおもしろさ」、「サスペンスとカタルシス、緊張と緩和といってもいいけど、その繰り返しと、そこに漂うユーモア」、そして何よりも、どうしてそう感じてきたのかわからないけれど、映画の「明るさ」が、始まりから終わりまで健在でした。
「やっぱり、スピルバーグやね。ドキドキ、させて、ホッとさせて、笑わせてくれる。」
ニュースソースと交渉した次長かな、バグディキアンいうヤツが紙袋いっぱいの何かを持って編集長トム・ハンクスのところに来ますね。「なんや?なんや?」と思ってみていると、不安でいっぱいのメリル・ストリープの部屋まで引っ張るんです。この間(ま)が絶妙ですね。
で、中身をひろげると、おもわず、いっしょになって、よかったなあ、とか。
なんや、あの顧問弁護士、アホやと思ってたら、かっこええセリフ吐いて最高裁で戦ってるんですね。やるときはやるんやないか。検事の助手のねーちゃん、裁判所に呼び出されたストリープに親切に声をかけて、『兄はベトナムです』って、ええセリフですね。ドーンと胸に来ます。もう、完全にスピルバーグの掌にのってたようなものですね。
まあ、そういう、映画に客を引っ張り込む手管はすごいですね。で、ついでに、映画そのもののメッセージにも引き込みます。良きアメリカっていうのでしょうか。何故か、個性的な個人を描いているにもかかわらず、自由と正義を選ぶアメリカ!をフツーに感じるように出来ているんです。ちょっと、映画、映画してるとこあるのですが、「それがスピルバーグ!」ということなんでしょうね。
劇場出るとき「トランプとか、アベとか、やっぱりクソや!」とつぶやいて、ちょっと、イキッった気持ちになっていましたね(笑)。
湊川公園は今日も青空でした。
新開地で映画を観たときはここに立ち寄りますね。来ると、なぜか天気がよいのです。まあ、天気がいい日にしか出かけないということもあるわけですけど。日差しは西に傾き始めていたけど、まぶしい夕暮れでした。。
煙草を喫って、水を飲んで、兵庫駅に向かって徘徊出発です。
「おっ、今日は、我ながら元気やな。」
監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 エイミー・パスカル スティーブン・スピルバーグ クリスティ・マコスコ・クリーガー 製作総指揮 ティム・ホワイト トレバー・ホワイト アダム・ソムナー
トム・カーノウスキー ジョシュ・シンガー
共同製作 レイチェル・オコナー リズ・ハンナ
脚本 リズ・ハンナ ジョシュ・シンガー
撮影 ヤヌス・カミンスキー
美術 リック・カーター
衣装 アン・ロス
編集 マイケル・カーン サラ・ブロシャー
音楽 ジョン・ウィリアムズ
キャスト
メリル・ストリープ (キャサリン(ケイ)・グラハム:ワシントン・ポスト社長)
トム・ハンクス (ベン・ブラッドリー:編集長)
サラ・ポールソン (トニー・ブラッドリー)
ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン)
トレイシー・レッツ (フリッツ・ビーブ)
ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ)
ブルース・グリーンウッド (ロバート・マクナマラ)
マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ)
アリソン・ブリー(ラリー・グラハム・ウェイマウス)
2017年・116分・アメリカ 原題「The Post」
2018/08/27パルシネマno12
追記2020・02・23
二本立てのもう一本「ザ・シークレットマン」の感想はここをクリックしてくださいね。
追記2022・07・29
記事の中で、クソや!とつぶやいたのは、もう4年前で、クソ野郎だと思っていた一人はもう大統領じゃないし、もう一人はつい先だって銃で撃たれて死んだそうだ。その結果、いろんな疑惑は山盛りのままそっと終わりにして、税金を使って葬式をするということらしい。
張本人だと思っていた奴がいなくてもインチキはつづくらしい。じゃあ、インチキの張本人はべつにいるということじゃないのか?誰なんだろう?最近の興味は、もっぱらそっちの徘徊老人です(笑)。
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