マーティン・マクドナー「スリー・ビルボード」パルシネマしんこうえん
学生時代の神戸には、いわゆる名画座と呼ばれる映画館がたくさんありました。この春から映画を観るようになって、神戸の街をうろうろすることが多くなりました。昔、あったはずの映画館がありません。本当は、無くなったことは知っていましたが、確かめてみているようなところがあって、そのたびに空を仰ぎます。「パルシネマしんこうえん」は生き残っている数少ない名画座、千円で2本だてです。
「スリービルボード」と、もう一つ、2本立てに入りましたが、あまりの涼しさに負けて、一本で出てきました。昔のことを思うとなさけないかぎりです。トホホ。
観た映画には堪能しました。主役の女性、フランシス・マクドーマントという人を観ていて、映画俳優にも演技ということがあるのだと、納得したような次第です。ぼくは、カメラマンがいいように撮って、組み合わせると演技になるじゃないか、なんて、いい加減な見方をする人なので、あまり、演技とか意識しないまま見ていることが多いのです。しかし、今日は、彼女に感心しました。 とてもいい女、そんな感じがしましたね。おばはんなのに(いや、失礼!)。
「おばはんやったら何が、どうやねん!」
そういうツッコミは、とりあえずなしということでお願いします。小さなしぐさや目つきに、哀しさとやさしさが漂うようなニュアンスがあって、にもかかわらず、実に闘争的なのです。
「ヤレ!ヤレ!いてもたれ!」
そう掛け声をかけたら(かけてないけど)、実際、やってしまうところも、なかなかよかったですね。
観終わって、つくづく「アメリカ映画やなあ」とため息をつきました。こういうふうな映画が、つまり、どう堂々たる論旨がって、やることはハッチャケている、そいう展開が、ぼくは好きやとつくづく思いました。
まあ、実に、思い込みに満ちた評価ではあるのですが、アメリカ映画をいいなと思う場合、ミュージカルでも、青春物でも、今日のようなシリアス(?)ものでも、どこかに、おおらかな明るさあって、それがいいなと思うわけです。
この映画もアメリカの南部のどこかが舞台なのですが、実にいい加減に、どこにもない街を作り上げていて、ありえないはずのヒロインとヒローが出てくるのです。暗く陰湿で暴力的に見えて、夢の場所が作り出されているという感じでした。
うん、やっぱりアメリカ映画やったというわけです。
監督 マーティン・マクドナー Martin McDonagh
製作 グレアム・ブロードベント ピーター・チャーニン マーティン・マクドナー
製作総指揮
バーゲン・スワンソン ダーモット・マキヨン ローズ・ガーネット
デビッド・コッシ ダニエル・バトセック
脚本 マーティン・マクドナー
撮影 ベン・デイビス
美術 インバル・ワインバーグ
衣装 メリッサ・トス
編集 ジョン・グレゴリー
音楽 カーター・バーウェル
キャスト
フランシス・マクドーマンド(ミルドレッド)
ウッディ・ハレルソン(ウィロビー)
サム・ロックウェル (ディクソン)
アビー・コーニッシュ (アン)
ジョン・ホークス(チャーリー)
2017年 116分 イギリス
原題「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」
配給:20世紀フォックス映画 2018/07/20・パルシネマno13
追記2019・08・20
一年前に見た映画で、とてもいい印象だった、それはのはいい。しかし、お気楽に「アメリカ映画」を連呼しているのはいかがなものか。配給こそ「二十世紀フォックス」だけれど、監督のマーティン・マクドナーはイギリスの監督だし、どっちかというとこれはイギリスの映画かもしれない。まあ、おいおい、そういう勉強もしながら…。
ところで、一年たってみると、この映画でプッツンのおまわりさん役だったサム・ロックウェル、まあ、これが何とも言えず良かったんだけど、「バイス」では、アホ丸出しのブッシュ大統領をやっていたし、まじめな方の警官ウッディ・ハレルソンは「記者たち」でやり手の新聞記者だったし、「LBJ」ではジョンソン大統領をやっていたらしい。
ジョンソン大統領の方は気づくのが遅くて見損ねたが、俳優の名前を覚えるとか、まあ、そういう楽しみも、ちょっとわかりかけてきた。
きちんと数えてはいないが、ちょうど百本を越えたくらいだと思うが、弁慶が好きなぼくの目標はまずは1000本。なかなか、先は長い。
ボタン押してね!