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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.08.26
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   ​グザビエ・ルグラン「ジュリアン Jusqua la garde」
 部屋がある。窓があります。庭(?)の木立が見えています。女性が入ってきて、もう一度タイトルの詳細の画面に戻って、カメラは部屋に戻りました。誰かが呼びに来て、二人は廊下を歩きはじめます。映画が始まったようです。​​

 暗い部屋に入ります。5人の女性と一人の大柄な男性がいて、机の向こうに二人の女性、一人は速記者のようです。向かい合って4人。隣り合っている二人が夫婦らしい。
 子どもの手紙が読み上げられて、読み上げている女性が、この場を取り仕切っている、判事(?)、あるいは調停者のようですね。
  子どもたちの親権を争っている母親ミリアム(​​レア・ドリュッケール)と父親​アントワーヌ(​ドゥニ・メノーシェ)​​​​​。父親と週末を過ごすことを裁判所に命じられた少年​ジュリアン(トーマス・ジオリア)​。​​​​​​​

​ チラシにも映っていますがジュリアンの表情は、たんに父親を嫌っているというよりも、恐れています。父親の自動車の助手席に座っていることの居心地の悪さは、嫌悪ではなく恐怖そのもののよですなのだが、それ以上に、その気持ちを隠し切れないことをこそ彼は恐れているようです。​
​​​「そういう映画なんや!」​​
​​​ 一旦、少年の震えるまなざしに気づいてしまうと、やるせなさと、このあと何が起こるのか気が気でなくなって落ち着きません。
​​​​​​ ジュリアンを脅し、ミリアムの居場所を探し当ててやってきたアントワーヌが復縁を迫り、泣きながらミリアムを抱きしめます。ミリアムの目は、怯えと恐怖。嫌悪と怒り。アントワーヌは何に涙してるのでしょう。​​​​​​
​「あかん、これは悲惨な結末しかない。しかし、この男は、ホントはどんな奴やねん?」​​
​​​​ 「以前あったこと」が回想されるわけではありません。アントワーヌが自分の両親に対して激高するシーンが一度あるだけです。浮かんでくるのは、連鎖していくなにかです。彼が何者なのか、それで、何となくわかるように思えます。​​​​​
​「オイオイ、どうやって終わるん?ああ、こういうの、あんまり好きちゃうなあ。」​
​​​​ ドアベルが執拗に鳴り響きます。廊下から足音が聞こえてきます。音が消えて静かになりました。再びドアが激しくたたかれます。時刻を気にしている様子はありません。ミリアムの名を呼び始めました。次の瞬間、銃が発射されました。​​
 ​闇の中で音が迫ってきます。
​​ 母親と少年は棺桶のようなバスタブの底で抱き合って震えています。やっとのことで警察に通じた携帯電話の画面だけが光っています。
​​ まず、真夜中の、この騒ぎを通報したのは隣の住人でした。警官が到着し、やっとのことで騒ぎが納まったミリアムの部屋を、ドアの隙間から覗いていた老婆がいました。ミリアムの部屋のドアが閉じられ、老婆の部屋のドアも閉まりました。画面も暗くなりました。​​
 映画が終わって、エンドロールが回りはじめる。あまりの呆気なさに、何をしていいかわからないような終わり方だった。
​ 元町駅まで歩きながら、最初のシーンを思い出していた。​ 
「そうか、たんなる狂ったDV男の話じゃないな、これ。最初の裁判所と、最後のドアを閉める隣の人。それがポイントやな。この監督は、なかなかやるな
「しかし、まあ、それにしても疲れた。これも、人にはすすめんなあ。これが世界中に蔓延してることは、やっぱり気付かんとあかんなあ。やわい『おとこ』が『男性性』とかいう力に頼り始める。拒否や否定に出くわすと逆上する。ありがちやなあ。」
​​​​​  帰ってきて原題を調べると「Jusqua la garde」でした。直訳すれば「保護されるまで」という意味のようです。英語の「custody」も、「親権」というよりは「援け」とでも訳したほうがよさそうですね。​​​​​
​​​ この映画の感想は男性と女性で大きく違うかもしれません。最後には銃までぶっ放してしまうこの男を、どこかで、愚かで滑稽で、弱いヤツだと思うのは男性的な視点でしょうね。子どもや女性は、それをどう感じるのでしょう。この映画の「リアル」の一つは、そこにあると思いました。ズレ、ですね。
 もう一つ印象に残ったのは、日本でいうなら「世間」の描き方ですね。他人の現実は「形式」や「マニュアル」でわかったつもりになることはありますが、「できれば関わり合いになりたくない」の連鎖の中から、それを断ち切ることは至難ですね。そこに「暴力」の温床がありますが、それが、きちんと描かれています。
 自分が常識的だと思い込んでいる「男性」諸君にほ「ひょっとして」のやるせなさを残すにちがいない作品だと思いました。ぼくも例外ではありませんね。
 ​​​

監督 グザビエ・ルグラン Xavier Legrand
脚本 グザビエ・ルグラン
撮影 ナタリー・デュラン
キャスト
レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン)
ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン)
トーマス・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)
マティルド・オネブ(ジョゼフィーヌ・ベッソン)
作品データ
原題「Jusqu′a la garde(「保護されるまで」かな)」ちなみに英語の題名は「custody」(保護・親権)
 2017年 フランス 93分
 2019・01・30・シネリーブル神戸no27

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最終更新日  2023.12.24 23:22:03
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