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カテゴリ:読書案内「村上春樹・川上未映子」
川上未映子・村上春樹「みみずくは黄昏に飛びたつ」(新潮社)(その2)
さて、いよいよ「地下二階」です。一晩たって、考えたことなんですが、村上春樹さんが、どんな風に考えて小説を書いているのかなんて、小説を読む人にはどうでもいいことかもしれませんね。 でも、、たとえばインタビューしている川上未映子さんのような若い小説家と、村上春樹はどこが違うのかというふうな疑問は大切なことのように思えるのです。ヤッパリ、何かが違いますね。それがこういう所に出て来るんじゃないでしょうか。 村上 で、ぼくは思うんだけど、集合的無意識が取引されるのは、古代的なスペースにおいてなんです。 二人の白熱した会話は続きますが、これくらいでいかがでしょう。村上春樹の「地下二階」の「集合的無意識」と、川上さんのそれとの違いが「誰に語り掛けているのか」という問いの答えとしてはっきり表れていますね。 おそらく川上さんが見落としているのは「古代」と、わざわざ、村上さんが断ってい語っていることの意味ではないでしょうか。それは、ただの洞窟ではないし、語るのが恥ずかしい「私の洞窟」などではもちろんないことです。それが「村上春樹の地下二階」というわけです。 これこそが、村上の作品の「世界同時性」を支えている可能性がありますが、どうなんでしょうね。本人は否定的なようですが、「風の歌を聴け」の最初から、「今」という時代や社会に揺らがない場所としての「地下二階」を描こうとしていたのではないでしょうか。そして、たどり着いたのが「古代」の語り部のいる洞窟だったのかもしれないとぼくは思います。 最後になりますが、初期の作品をめぐって、面白い会話があります。ちょっと長くなりますが、引用しますね。 川上 初期三部作の頃に書けなかったものって、今でもよく覚えてますか? ね、おもしろいでしょ。最近の村上作品について、 「性愛シーンの頻繁さに辟易する。」という、高齢の読者も知人にいらっしゃいますが、この話は笑えるでしょ。今時、20代30代の方で性愛とかいう人いませんが、70歳を越えた人が文学とかについて語ると、思わず出てくるので、 えっ? て、笑ってしまうのですが、本論とは関係ありません(笑)。 でも、70代って、村上と同級生ぐらいの年齢だったりするんですよね。そのあたりに大事なことがあるとも思うんですね。 ともあれ、案内としては「地下二階」にこだわりましたが、村上ワールドに関心のある人は、お読みになって損はないでしょう。 全く触れていませんが、「騎士団長殺し」(新潮文庫)の販促イベントのような面もあるインタビューなわけで、そのあたりも結構語っていますからね。まあ、読みではあると思います。 ボタン押してね! にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.23 01:40:50
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