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カテゴリ:映画 日本の監督 タ行・ナ行・ハ行 鄭
箱田優子「ブルーアワーにぶっ飛ばす」シネリーブル神戸
今日、見たい映画は他にもありました。この映画を選んだ理由はシム・ウンギョン。「新聞記者」の吉岡エリカの声の響きと、独特な眼差しにもう一度出会いたかったのです。 もっとも、映画が始まって、何だかよくわからない葛藤と格闘している主人公らしい砂田という女性を演じている女優に、どこかで見覚えががあるなと思って、口元と目つきを見ていて思い出しました。「海街ダイアリィ―」の三女、千佳ちゃんでした。千佳ちゃんも三十歳を越えて、なかなか苦労しているじゃないかとは思ったのですが、やっぱり、この映画の目玉は、砂田の友達「キヨ」を演じているシム・ウンギョンでした。 「合格!◎!」 いやあー、よかったですね。シム・ウンギョンはこの映画でも、独特な存在感をいかんなく発揮して、夏帆という女優さん、千佳ちゃんね、が演じるCMディレクター(?)砂田の、下手をすれば、自意識のマスタベーションに終わりかねないドラマを、見事に救っていましたね。 セリフで発する「ことば」が自意識との間に微妙な隙間を感じさせて、その「間」が何とも言えません。 そこに、あの目ですよ。なんなんでしょうね?あれは演技だとはとても思えません。話の筋を壊しそうで、堂々と物語の真ん中を歩いている風情には、思わず目を瞠ってしまいました。 映画そのものは、大昔、大森一樹という人の「オレンジロード急行」を見た時の「あっけなさ」を思い出しました。いや、「自動車で出かける」という設定以外、何も似てはいないのですか、ただ、全体に、アマチュアの頼りなさが漂っているところは、似ていると、ぼくは思いました。 夕暮れの「ブルー・アワー」を走っている車中での「千佳ちゃん」の、最後の熱演も悪くはないのですが、シム・ウンギョンの「ダサいのは悪くないよ。」(多分そんなセリフだった)が、とてもよかったし、エンドロールで聞こえ始めた主題歌の松崎ナオの「清く、正しい」声が、最後の決めワザでしたね(笑)。 映画が終わって、シネリーブルを出ると、まさに、「ブルーアワー」でした。雨上がり、西の空に夕焼けの気配はありましたが、黄昏の気が満ち始めていて、頭の中に、さっきの映画の主題歌の声が聞こえてきて、涙が止まらなくなってしまいました。誰にも見られていないからいいですが、ホント、おい、おい、ですね(笑)。 映画は、退職した老人に対してではなくて、今、格闘している若い人の方を向いて作られているなと思って席を立ったはずなのです。にもかかわらず、この涙は何でしょう?この映画からの直接の影響というよりも、映画が、ぼくのなかの閉まっていた箱、まあどんな箱だかよくわかりませんが、それの蓋を開けたような感じがしました。 それにしても、タオルのハンカチで、しきりに目をこすりながら歩いている老人というのも、ちょっと異様だったかもしれませんね(笑)。 監督・脚本 箱田優子 音楽 松崎ナオ 主題歌「清く、ただしく」 キャスト 夏帆(砂田)・シム・ウンギョン(清浦)・渡辺大知(砂田の同居人)・ユースケ・サンタマリア(砂田の不倫相手)・でんでん(砂田の父)・南果歩(砂田の母) 2019 日本 92分 2019・10・25・シネリーブル神戸no34 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.21 21:35:59
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