セドリック・ヒメネス 「ナチス第三の男」シネリーブル神戸
高校の図書館で、自称館長を名乗っていた数年前に本屋大賞をとった、フランスの小説を新しく棚に並べたことを覚えています。ローラン・ビネという人の「HHhH (プラハ、1942年)」(東京創元社・海外文学コレクション)という作品です。記憶に残ったのは、翻訳小説としては、珍しく評判になったからですが、表紙のデザインが面白かった。
チラシを見ていて、
「ああ、あれじゃないか!」
そう思って観客席に座りました。
いかにも、ドイツの青年という風情の男が画面に登場する。表情のわかりにくい顔立ちですが、傲慢さの(この手の男前がみんな傲慢に見えるのは、全く個人的な勝手な印象なので、誰もがそう思うかどうかはわからない)裏側に、かすかな不安を感じさせる表情でした。
マーロン・ブランドという、もし、個人的に出会ってもどうしても好きになれそうもないが、映像の上ではスゴイなという俳優がいたが、そっくりでした。で、この、金髪で青い目の男が主人公でした。
ナチスのユダヤ人問題の最終解決政策の発案者であり、実質的遂行者となった、この男の内面を映像はクリアーに暗示していました。
劣等感、幼児性、いわれのない不安。
原作小説で、ビネは「4つのH」(Himmlers Hirn hei?t Heydrich、ヒムラーの頭脳、すなわち、ハイドリヒ)というこの男につけられた嘲りの綽名を使っているのですが、「ナチス第三の男」という邦題は、ヒットラー、ヒムラーに続く、三番目のHという意味もありそうですね。
画面が、もう一組の主人公たち、イギリス空軍機から雪原に舞い降りた二人のチェコスロヴァキア亡命政府軍兵士の、敵地と化している故国の町での活躍を映し始めると、もう目を離せません。
秘密の計画、下見、そして、ロマンスもあります。かろうじて成功した暗殺。報復が始まる。次々と人々が殺されて行きます。裏切り、密告があります。自殺、逃亡があります。そして銃撃戦がありました。
追い詰められたヒーロー二人はが、なんと地下室の水の中で自殺して映画は終わったのでした。
殺す側と殺される側、両者を主人公にした筋はこびは、見ていて微妙なずれのようなものを感じさせて、落ち着きません。
穏やかな気持ちで見終えることはできなかったのですが、なぜか、自転車が印象的な映画でした。
映画館を出ると、三ノ宮の町は暮れ始めていました。歩く元気が湧いてこないので高速バスで帰ってきました。バスを降りると時雨ていました。
「日が、すこし長くなったなあ。でも、まあ、もうしばらくは冬か。」
そんな気分の夕暮れでした。
監督 セドリック・ヒメネス Cedric Jimenez
原作 ローラン・ビネ
「HHhH (プラハ、1942年)」(東京創元社・海外文学コレクション)
脚本 オドレイ・ディワン
キャスト
ジェイソン・クラーク(ラインハルト・ハイドリヒ)
ロザムンド・パイク(リナ・ハイドリヒ)
ジャック・オコンネル(ヤン・クビシュ)
ジャック・レイナー(ヨゼフ・ガブチーク)
ミア・ワシコウスカ(アンナ・ノヴァーク)
原題「The Man with the Iron Heart」
2017年 フランス・イギリス・ベルギー合作 120分
2019・01・30・シネリーブル神戸no37
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