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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.12.20
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​​​​​​​大沢真幸「三島由紀夫 二つの謎」(集英社新書)​


 ここに、二つの小説の、最後の文章があります。

 これと云って奇功のない、閑雅な、明るくひらいた御庭である。数珠を繰るような蝉の声がここを領している。

 そのほかには何一つ音とてなく、寂寞を極めている。この庭には何もない。記憶もなければ何もないところへ、自分は来てしまったと本多は思った。

​ 庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしている。・・・・・​

​ まろうどはふとふりむいて、風にゆれさわぐ樫の高みが、さあーっと退いてゆく際に、眩くのぞかれるまっ白な空をながめた、なぜともしれぬいらだたしい不安に胸がせまって。「死」にとなりあわせのようにまろうどは感じたかもしれない。生がきわまって独楽のように澄む静謐、いわば死に似た静謐ととなりあわせに。・・・・​
 ​この、とてもよく似た二つの文章を読んで、すぐに作家と作品を言い当てることができる人は、小説家三島由紀夫と、かなりなお付き合いをしてきた人だと思います。​ ちなみに、一つ目は、三島由紀夫の絶筆「豊饒の海」第四部「天人五衰」(新潮文庫)​の最後の文章で、二つ目が、三島、十代の文壇デビュー作、​「花ざかりの森」(新潮文庫)の結末部です。​​​
 大沢真幸は、「三島由紀夫 二つの謎」という、この評論で、この二つの小説の作家三島由紀夫が結果的に二つの謎を残してこの世を去ったと話を始めます。​​​
​ 大沢のいう二つの謎とはなんでしょうか。​
​ 一つめは三島が選んだ最期についてです。​19701125日、自衛隊の市谷駐屯地において、割腹自殺を遂げた、あの死の謎です。​「なぜあのような、愚かな死を死んだのか。」​
​​​​ 二つめの謎は長編小説「豊饒と海 四部作」、最終巻「天人五衰」の結末をめぐる謎です。一般的には、輪廻転生を失敗に終わらせた安永透という登場人物と、ただの覗きオヤジだったことが暴露された本多繁邦あたりの顛末のくだらなさあたりを予想されるかもしれませんが、そうではありません。​​​​
​ 齢八十をこえた本多が、​六十​年の年月を越えて「再会」した月修寺門跡綾倉聡子が口にする、驚くべき、この一言の謎です。​
​「その松枝清顕さんいう方は、どういうお人やした?」​
 「豊饒の海」をお読みになった方であればご存知でしょう。この言葉の後、会話はこう続きます​ 

「しかし、御門跡は、もと綾倉聡子さんと仰言いましたでしょう」

「はい。俗名はそう申しました」「それなら清顕君を御存知でないはずはありません」

​「いいえ、本多さん、私は俗世で受けた恩愛は何ひとつ忘れはしません。しかし松枝清顕さんという方は、お名をきいたこともありません。そんなお方は、もともとあらしゃらなかったのと違いますか?何やら本多さんが、あるように思うてあらしゃって、実ははじめから、どこにもおられなんだ、ということではありませんか?お話をこうして伺っていますとな、どうもそのように思われてなりません。」

「では私とあなたはどうしてお知り合いになりましたのです。又、綾倉家と松枝家の系図も残っておりましょう。戸籍もございましょう。」

「俗世の結びつきならな、そういうものでも解けましょう。けれど、その清顕というお方には、本多さん、あなたはほんまにこの世でお会いにならしゃったのですか?又、私とあなたも、以前たしかにこの世でお目にかかったのかどうか、今はっきり仰言れますか?」

「たしかに六十年前ここへ上った記憶がありますから」

「記憶というてもな、映る筈もない遠すぎるものを映しもすれば、それを近いもののように見せもすれば、幻の眼鏡のようなものやさかいに」

「しかしもし、清顕君がはじめからいなかったとすれば・・・」

「それなら、もいなかったことになる、ジン・ジャンもいなかったことになる。・・・そのうえ、ひょっとしたら、この私ですらも…」

​「それも心々ですさかい」​

​ ​​輪廻転生をテーマにしたこの、長大な小説の結末に、小説の結構そのものを、すべて無にしかねない、この会話を用意した、三島の意図とは何か。それが大沢が解き明かそうとした二つ目の謎でした。​​
​ その謎を、大沢真幸がどう解いているのか、あるいは、解けているのかは本書をお読みになっていただくほかありませんね。​
​​​ よく知られていることですが、三島の遺作の題名が「豊饒の海」という、月面上にある、一滴の水もない「海」であるということが、この評論の起動エンジンの役割を果たしていると思いました。「花ざかりの森」の、向こうに見える「海」から、「豊饒の海」へ、三島文学における「海」の変容とでもいうべきでしょうか。引用も面白いですね。​​​
 ただ、「大沢真幸が、何故、今、三島由紀夫を論じるのか」というこの本を読み始めた時の疑問は、結局、解けませんでした。
​​ しかし、収穫はありましたね。こうして「天人五衰」の結末部、ト書き的な書き込みは省いた「会話」部分だけを書き写しましたが、ここを指摘した、大沢の慧眼もさることながら、「記憶もなければ、何もないところ」を書き残した、三島由紀夫の予見性を、死後五十年の社会がリアルに際立たせ始めている気味の悪さを、書き写しながら実感できたことですね。​​
​ 三島由紀夫の作品を、今、読みなおそうとは思いませんが、読みなおせば、それはそれで、面白いのだろうなと思いました。​



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最終更新日  2020.12.17 23:00:43
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