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カテゴリ:映画 アメリカの監督
マーティン・スコセッシ「アイリッシュマン」シネリーブル神戸
ロバート・デ・ニーロを初めてスクリーンで見たのは、はっきり(ウソだけど)覚えています。三宮にあった、阪急シネマという映画館です。封切で見ました。あの頃、封切映画は高かったのですが、モギリのアルバイトを、友達と掛け持ちして、映画館の人には隠れて、こっそり見ました(犯罪ですね)。 本当に、びっくりしました。「タクシー・ドライバー」のデ・ニーロは、正真正銘、危ない人、そのままでした。監督の名前はマーティン・スコセッシです。1本で覚えました。40年以上前のことです。 その二人が、二十数年ぶりに映画を撮ったということを聞いて、勇んでいシネ・リーブルにやって来ました(老人割引ですが、料金はちゃんと払いました)。見たのはスコセッシ監督の「アイリッシュマン」でした。 年を取ったデ・ニーロが運転手で、バカでかい車に乗っています。そんなシーンで映画は始まりました。 ロバート・レッドフォード「さらば愛しきアウトロ―」 あの頃、カッコよかった映画スターたちが、老人になって、ぽつぽつスクリーンにあらわれています。バート・レイノルズやハリー・スタントンは別れのあいさつのようなもんでした。 今、目の前に、笑ってるのか、困ってるのかわからない顔の、あの、デ・ニーロがいます。まあ、それだけで満足です。別に、ドンパチや、狂気じみた振る舞いなんてなくていい、そう思っていると、妙にテンションの高い、ぐりぐり目玉の、チビが演説を始めました。目を疑いました。 なんと、あの、アル・パチーノじゃないですか。 「スケアクロウ」のジーン・ハックマンの親友ライアン、「狼たちの午後」で、「ゴッド・ファーザー」にも一緒に出ていたジョン・カザールが演じる、友達サルを撃ち殺されて、ブチ切れるソニーを演じたアル・パチーノ。それが40年前の出会いでした。 映画のポスターとかチラシとか、気付いてもよさそうなものなのですが、気付きませんでした。 スクリーンに映った姿に気付いてみると、何だか、やたら得をした気分になって、血が騒ぎ始める気がしました。 とにかく楽しい!意味なく楽しい! 70年代の、狂気の青年たちの世界が一気によみがえってきます。 デ・ニーロが何人殺そうが、アル・パチーノがどんなインチキで成り上がろうが、みんなOK!いいぞ、いいぞ、ヤレヤレ!。 マフィアの殺し屋デ・ニーロが、とどのつまりは、親友アル・パチーノを撃ち殺す破局は、70年代から、80年代にかけて、映画館に通い続けていた、ぼく自身の、あの時代にピリオドが打たれたような、もの悲しさと寂しさが滲んでいるような気がしました。たぶん、この二人が共演する映画も、もうそんなには撮られることはないでしょうね。 デ・ニーロが部屋を出てゆく人に、なんか指図しました。 「ちょっと、そこのドアをあけておいてくれ。」 その、少しあいたドアの向こうの暗い部屋に、殺し屋アイリッシュマンじゃなくて、老いたデ・ニーロがいます。そう思って、ぼんやりしていると画面が暗転しました。 暮れかかった、栄町通をJR神戸駅に向かって歩きながら、たばこをくわえて、火をつけることを何となく、ためらって、あの頃、タバコの吸い殻は、そのあたりにポイ捨てしてたことを思い出しました。 もちろん、今日も肩をそびやかして煙草をくわえているけれど、吸殻をポイ捨てしたりはしません。でも、ちょっと思います。ほんとに、いい時代になったんだろうか、って。 監督マーティン・スコセッシ 原作チャールズ・ブラント『I Heard You Paint Houses』 キャスト ロバート・デ・ニーロ(フランク・シーラン「ジ・アイリッシュマン」) アル・パチーノ(ジミー・ホッファ) ジョー・ペシ(ラッセル・ブファリーノ) ボビー・カナヴェイル(フェリックス・ディトゥリオ) レイ・ロマーノ(ビル・ブファリーノ) ハーヴェイ・カイテル(アンジェロ・ブルーノ) 2019年 209分 アメリカ 原題「The Irishman」 2019・11・25・シネリーブル神戸no39 追記2019・12・23 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.27 23:49:42
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