鈴ノ木ユウ「 コウノドリ 19 」(講談社)
ヤサイクンがクリスマスの「マンガ宅急便」を届けにやってきました。
「あと何巻あるの?」
「28巻かな?最新は。うちには20何巻やったかな?コユちゃん姫が読んでるから、読み終わったら持ってくるわ。」
「エエー、小学生が読んでるの?」
「テレビでやってたやろ、知らん?19巻の腰巻になってるやん。下の二人が出産ごっこしてんの見たやろ、チビ二人で。あれ、テレビ見て、やってんねん。」
ポカーン!?
テレビを見ないシマクマ君とチッチキ夫人は、一年生と保育園のチビラ2号、3号の二人が、ぬいぐるみをスカートの中から引っ張り出す、その遊びにはおぼえがあります。
それにしても、
「どうして、そんなことを知っているのか?」
と思っていたわけなのですが、なんともはや、今ごろ言うのもなんなんですが、テレビの教育力はすごいですね。
一方で、四年生のオネーちゃん、チビラ一号は読み仮名を振っているわけではない、ちょっと大人向けの、この「産婦人科」マンガを、65歳のジージと(この程度の漢字なら、一応、軽く読める)競い合って読んでいるというのも、考えようによれば、かなり「???」という感じがしないわけでもありません。
さて、19巻。このマンガの面白さの一つは、病院内の人間関係の描き方にあるんじゃないでしょうか。鴻鳥サクラくんを中心に、巻毎にそれぞれの人間模様が描かれる。今回のお話は二つ。
54話「NICU part12」は白川先生の成長譚。何巻か前に壁にぶつかって「救急救命」にいってった下屋カエさんと同期の自信家ですが、彼がぶつかる壁は「医療ミス」の危機でした。
自分の診断を過信するとはどういうことか。たぶん、教育の現場なんかでもありがちな、一生懸命やっている自分に対する過信。適当な人はぶつからないかもしれない壁ですね。
「ここ(NICU)のスタッフが何か変だと思ったときは何か変なんです」
「白川先生はその助言をないがしろにしました」
「それは明らかにあなたのミスであり・・・実力を過信したに過ぎない」
先輩今橋先生の厳しい一言。なんか、40年前に学年の主任の先生に言われたことばを思い出しましたね。
「シマクマさん、あなただけで働いているわけでもないんですよ。」
微妙なニュアンスなんですが、けっこう記憶に残ってますね。
55話「羊水塞栓症」は助産師小松ルミ子さんと親友の助産師武田陽子さんの究極の友情の物語でした。大げさな言い方で申し訳ないが、ちょっと究極でした。
小松さんが武田さんと出会ったのは助産師免許を取る学校ですね。
回想シーンのお若いとき、(多分お二人は十代ですね)と、ちょっと高齢出産の年齢になられたお二人に、絵柄上ほとんど差がないのが、このマンガ家さんの特徴ですね。普通、へたくそって言うんですが、あんまり気にはなりません。
小松さん、悩んでたんですね、助産師になるかどうか。背中を押してくれたのが武田さん。いい友達ですね。その武田さんが、、親友小松さんの病院で、無事、出産、めでたしのはずが、出産直後「羊水塞栓症」という、よく知らないんですが、読んでると分かる症状を発症するんです。
帝王切開の手術室が、命がけの現場になってしまっています。
小松さんは、武田さんが出産した赤ちゃんを、約束どおり取り上げて、保育器の部屋に運んだあと、手術室に走ります。そこでは心肺停止した武田さんに「除細動」の電気ショックが施されようとしています。勝負がかかっています。ボー然と立ち尽くす小松さんが祈ります。
「武田・・・ちゃんといるぞ。」
「私はちゃんとそばにいるぞ!」
ね、読者はここで、やっぱり泣くと思うんです。「心拍再開!」にじゃなくて、小松さんが、そこに駆け戻って、祈りながら、呼びかけることにね。祈るなんてどこにも書いてないんですが、読んでるとわかるんです。小松さんは心から祈っていました。
「赤ちゃん」が誕生する漫画を描き続けている鈴ノ木ユウさんは、テレビドラマ化もされ、きっと人気者になっているに違いないんですが、このシーンで、このセリフがでてきて、こんなふうに描けるかぎり読者は読み続けるでしょうね。
思うに、このマンガは、始めっから、
わたしはあなたのそばにいるぞ!
という、「祈り」の話なんですよね。相手が「赤ちゃん」なんですから。
追記2019・12・27
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