ジョセフ・L・マンキウィッツ「イヴの総て」ナショナル・シアター・ライヴ 2019
学生時代から、足掛け40年、「お芝居」とか、「映画」とか、自分ではもう読まないとか言ってますが「小説」とか、「あれ、面白いよ。」と声をかけ続けてくれているおにーさんがいます。通称「イリグチ」君。
「ああ、シマクマ君?ナショナル・シアター見に行きましょか?」
「うん、行くつもりやってんけど、じゃあ会場でね。」
やって来たのが神戸アートヴィレッジ。演目は「イヴのすべて」。
原作はジョセフ・L・マンキウィッツという監督の映画ですね。マンキウィッツという監督はエリザベス・テーラーが主演した「クレオパトラ」とか、カーク・ダグラスとかが出ていた「大脱走」とか撮った人です。
この芝居は、1950年公開で、その年のアカデミー賞を受賞した映画「イヴのすべて」の劇場版です。
劇中、大女優「マーゴ」を演じているのはジリアン・アンダーソン。彼女に寄生虫のように取り付いて、やがてその地位を手に入れるであろう若き女優の卵「イヴ」を演じるのはリリー・ジェームス。演出はイヴォ・ヴァン・ホーヴェ。
映画が始まって、しばらくして、思い出しました。主演のジリアン・アンダーソンは「欲望という電車」の主人公ブランチ・デュボアを演じていた女優さんですね。あのお芝居での、この女優さんは微妙な表情の変化が印象的だったんですが、今回もその演技には堪能しました。
演出は舞台の進行と映像を組み合わせる斬新(?)ものでしたが、果たしてうまくいっていたのかどうか、判定は難しいでしょうね。
その場に、つまりは見えている舞台上に、今いない人物の行動をカメラが追うんですね。ドアの向こうに消えた人物がそこで何をしているのかを、観客に見せるわけです。
映画では当たり前ですが、お芝居でのこの演出は見ている人によって感想が変わるでしょうね。ぼくはいかにも「映画」のリメイクの舞台だなあと思いながら、何だか、舞台で見るお芝居としては「五月蠅い」ものを感じました。
映画が終わって、新開地の商店街を歩いていると「イリグチ」君が、しゃべり始めました。
「ナショナルシアターゆうてもな、やっぱり玉石混交やねん。あんな、チェーホフの芝居で木い切る音は聞こえてくるけど、切ってるとこ見せたりせえへんやろ。」
「あの映像のこと?」
「うん、あれはあかんなあ。」
「わかりやすいいう面もあるんちゃうかな?」
「うーん、お芝居としてはどうかな?ぼくは納得できまへんな。」
いろんなジャンルで、「わかりやすさ」が「おもしろい」につながる傾向があります。感想も言いやすい。学校図書館の司書さんや本屋の店員さん、その結果なのか出版社のキャッチ・コピーもが「泣ける本」、「怖い本」、「すぐに・・・できる」という具合で、「わかりやすさ」が氾濫しています。
「これはちょっとおかしいぞ。」
そういう視点は、やはり大切なのではないでしょうか。60年以上も前の映画が舞台になって甦るときに、今という時代の「病理」が、その方法において浮き彫りになっているというのは、なかなか興味深いと思いました。
作 ジョセフ・L・マンキウィッツ
演出 イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
キャスト
ジリアン・アンダーソン
リリー・ジェームズ
原題「All About Eve」 上演劇場「Noel Coward Theatre(ロンドン)」
収録日「2019・4・11」
2019・12・14アート・ヴィレッジ
追記2020・01・07
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