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カテゴリ:映画 韓国の監督
ポン・ジュノ「パラサイト 半地下の家族」シネリーブル神戸 「タクシー運転手」ですっかりファンになったソン・ガンホが主演なんですよね。チラシでは目を隠していますが、向かって左端の男です。
チラシを読むまで気付きませんでしたが、カンヌ映画祭のパルムドール作品だそうです。初日のシネリーブルはさほど混んでいたわけではありませんでした。イスズベーカリーの「フィッシュフライ・タルタルソース添え」パンを齧っていると始まりました。 Wi-Fiが繋がらないと騒いでいる、二十歳くらいの男の子と女の子、母親らしいおばさん、その傍らで宅配ピザの箱を組み立てている中年の大男、ソン・ガンホですね。この四人家族が住んでいる建物の構造が、イマイチよく解らないのですが、ここがとりあえず「半地下」の住居らしいですね。 この四人が坂の上の豪邸に、どうやってパラサイトするのかというのが前半ですね。笑えるような、笑えないような、ドキドキするような、しないような、ある種、嘘くさい展開ですが、この辺りは好き好きでしょうね。ぼくは大男のソン・ガンホが曲芸のようにピザの箱を組み立てていたり、母親のチャン・ヘジンがハンマー投げをするシーンとかがおかしかったですね。 韓国では「坂の上のベンツ」というのが金持ちの象徴なのでしょうか。「バーニング」という映画にも、似たような坂道の上の豪邸のシーンがありましたが、この映画では、そこから坂の下を遠景で撮らないで、いきなり半地下生活のシーンというのが面白いですね。 後半は、このお屋敷にも、半地下どころか、地下二階があるという展開でした。北のミサイル攻撃に備えて地下シェルターをコッソリ作った建築家と、その存在さえ気づかない若いIT企業の社長夫婦という組み合わせが仕込まれているのですが、この映画をただのブラックコメディでは終わらせない、監督のたくらみを感じさせます。 映画はこの地下シェルターに住む本物の「地底人」夫婦と「半地底人」家族の対決へと展開し、やがて、ハチャメチャな破局を迎えます。 後半の途中、坂の上のお屋敷から半地下の住居まで逃げ帰るシーンが一番印象的でしたね。長い急な階段を駆け下りていく、社会の底のような街にたどり着くと、半地下住居は、折からの豪雨による洪水で水没している。 坂の上のお屋敷では広い庭でインディアンごっこの降って湧いたリアルに興奮する子供がいて、それを眺めながら、ソファーでセックスシーン繰り広げる夫婦がいる。ごった返した避難所の人ごみの中で「無計画の計画」を説く半地下人のソン・ガンホとその家族がいる。ここまで、畳みかけてくるシーンのコントラストには、構造分析なんて手続きはいりませんね。現代という「時代」と「社会」が鮮やかに浮かび上がります。 街の底から立ち昇ってくる「貧困」の匂いを、厳重なセキュリティーで脱臭しているはずのお屋敷に、アメリカを経由した外部からパラサイトを敢行する寄生虫たち。それに対して、屋敷の地下二階に「韓国」という社会に潜在し続ける無意識のような、旧来の寄生虫を埋め込んでいる構成も俊逸だと思いました。 とうとう、本物の地底人になってしまったソン・ガンホと、彼を救い出すという「かなわぬ夢」を見る息子のラスト・シーンは「現代の奈落」そのものでした。ここまで念を押されると、もう笑えませんね。何はともあれポン・ジュノという監督の名前は覚えました。 それにしても、カンヌ映画祭のパルムドールは2018年の「万引き家族」に続いて、角度は少し違いますが、よく似たテイストの「家族」の崩壊を描いた、アジアの映画なのですね。 こうなったら、ケン・ローチの「家族を想うとき」にも何か賞をあげて、カンヌ「崩壊家族大賞」三部作と銘打って上映すればどうでしょう。「みんなでへこむ映画祭」とか。 ああ、そうでした。お金持ちのパクさんの、お馬鹿で、妙に色っぽい妻を演じていたチョ・ヨジョンという女優さんはいいですね。若き日の若尾文子を思い出しました。顔や体つきは全く似てないんですが、なんか、根っからの天然な感じが似てると思いました。 監督 ポン・ジュノ 製作 クァク・シネ ムン・ヤングォン チャン・ヨンファン 脚本 ポン・ジュノ ハン・ジヌォン 撮影 ホン・ギョンピョ 美術 イ・ハジュン 衣装 チェ・セヨン 編集 ヤン・ジンモ 音楽 チョン・ジェイル キャスト ソン・ガンホ(父キム・ギテク) 「タクシー運転手」・「バーニング」・「家族を想うとき」・「万引き家族」の感想は題名をクリックしてみてください。 ところで「地底人」という用語は、四コマ漫画のいしいひさいち、そう「バイトくん」、「がんばれ‼タブチくん‼」の彼が使っていた言葉です。ぼくは彼のマンガの「プガ・ジャ」以来のファンです。 追記2020・01・15 ツイッターで教えられました。家政婦役の「イ・ジョンウン」さん、「タクシー運転手」でも、「焼肉ドラゴン」でも出会っていたんですね。名前が覚えられないボクも新しい女優さんの名前を覚えられました。この人の存在感は、とてもいいですね。それにしても韓国映画にはいい役者さんがいますねえ。 追記2020・02・10 2020年のアカデミー賞なんだそうです。うーん、ほかのどれがという気はありませんが、これですか!?という感じですね。でも、受賞はめでたいですね。 ボタン押してね! ボタン押してね! nno41 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.22 21:47:01
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