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2004年《書物の旅》(その11)
中村哲「空爆と復興」(石風社) 15年ほど昔、高校生の皆さんに教室で配っていました。もう、いい年の教員でしたが、教科書の外の世界に目を向けてほしいと願っていたようです。その「読書案内」を「2004年書物の旅」と称して投稿しています。下の記事は、その案内を2020年に書き直して投稿したものです。 「もう、これくらいで放置していただきたい」というのが一言で述べ得る感想である。現在のアフガニスタンの状況は、大の大人が寄ってたかって、瀕死の幼な子を殴ったり撫でたりしているのに似ている。この一年間、私たちにとって聖歌といえるものは、「情報化社会」が必ずしも正しい事実を知らせず、むしろ、世界中に錯覚を振りまいて、私たちが振り回されることになるのを身にしみて知ったことである。無理が通れば道理が引っ込む。世界を支配するのは、今やカネと暴力である。 昨年(2002年)九月、米軍の空爆を「やむを得ない」と支持したのは、他ならぬ大多数の日本国民であった。戦争行為に反対することさえ、「政治的に偏っている」ととられ、脅迫まがいの「忠告」があったのは忘れがたい。以後私は、日本人であることの誇りを失ってしまった。「何のカンのと言ったって、米国を怒らせては都合が悪い」というのが共通した国民の合意のようであった。 2003年12月の「平和を奪還せよ」という文章ではこう書き残されています。 このところ現地では米軍に対してだけでなく、国連組織や国際赤十字、外国NGOへの襲撃事件が盛んに伝えられています。「アフガン人は恩知らずだ」といって撤退した国際団体も少なくありません。 今回の事態においても、「私たちの祖先が血を流して得た結論」であるはずの「平和」が失われる危機に、今、直面しているという認識を「私たち」は共有しているのでしょうか。無知と驕り高ぶった臭いのする傲慢が蔓延してはいないでしょうか。 この本の読みどころは、中村哲のこうした発言の他に、彼とともに「平和を奪還」する仕事に携わっている、現場のスタッフの皆さんの生の声が収録されているところだと思います。460ページにわたる大部の本ですが、手に取ってご覧になってはいかがでしょうか。 追記2020・01・12 中村さんについて「中村哲ってだれ」・「医者井戸を掘る」・「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」という投稿にはそれぞれ表題をクリックしてください。読んでいただければ嬉しいです。 追記2020・02・16 ロッキン・オンの渋谷陽一さんが「中村哲」のインタビューを公開しました。是非お読みください。 ボタン押してね! ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.08.17 18:59:48
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