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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.02.06
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​小梅けいと「戦争は女の顔をしていない」(KADOKAWA

​​​​  2020年お正月がすんで、節分が終わった次の日、立春ですかね。ヤサイクンがいつものようにマンガ便を運んできました。​​​
「あれ、これって評判やん。」
「やろ。」
「エー、ドウナンこれ、マンガにするの?なんか違うんちゃうの?」
「でも、みんなマンガでしか読めへんで。一人でも読む人増えたらええんちゃうの。まじめなマンガやろ。」
「真面目やで。」
「あんたでもこんなん読むの?」
「原作も読んだことあるで。もう、だいぶん前やろ。」
​​「エー?ヤサイクンノーベル賞とか読むの?」​​
「エッ?どういう意味?」
​​​​ ​まあ、親子の会話としても、老人と若者の会話としても、親であり、年長の側の、えらい失礼な言い草がありますが、ビルドゥングス・ロマン大好きな、永遠の少年ヤサイクンが、評判の社会派マンガ、「戦争は女の顔をしていない」(KADOKAWA)を運んできました。
​ ​​原作はスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチという「チェルノブイリの祈り」(岩波現代文庫)で世界中から注目され、2015ノーベル文学賞を受賞した、ベラルーシという国の女性のジャーナリストです。
 ​​「チェルノブイリの祈り」という作品も、聞き書きのスタイルで、放射能に汚染されていく社会で生きている人たちの姿を、一人一人浮き彫りにする作品でしたが、「戦争は女の顔をしていない」(岩波現代文庫)は、彼女のデビュー作です。
​​ 「大祖国戦争」ソビエト連邦では第二次世界大戦のヨーロッパ東部戦線での戦いをこう呼んだそうですが、プロレタリア独裁国家の存亡をかけて、文字通り国家総動員の戦いで、何十万人もの女性が兵士になって従軍した戦争だったそうです。
​​​ しかし、命永らえて帰国、帰郷した女性兵士たちは、女性であるからこその戦場体験の悲惨も戦後の生活の苦闘も、30年間、誰にも語ることができませんでした。
 原著者のアレクシエーヴィチは、動乱のソビエト社会を生き抜いてきた何百人もの元女性兵士をインタビューし「戦争は女の顔をしていない」(初訳三浦みどり 群像社)として1985に出版しました。日本に紹介されたのは2008三浦みどりという方との翻訳ですが、翻訳者の彼女はすでに亡くなっているようです。
​​​​ ​​​​さて、漫画版「戦争は女の顔をしていない」ですね。原作に忠実なマンガ化のようですが、1七章からできています。で、そこに登場するのは洗濯兵、軍医、狙撃兵、衛生指導員、高射砲兵、斥候兵、一等飛行兵、鉄道機関士、射撃兵というふうに、歩兵以外の戦闘要員、輜重、衛生などの、あらゆる実戦部隊を経験した人たちです。​​

​ 歩兵師団長を助けようとした狙撃兵マーシェンカ・アルヒモアが、砲撃で両足を失うシーンです。​

​​​

​​「私を撃ち殺してくれ。」

​ ​それが彼女の叫びでした。​
 
戦後三十年、足を失った障害者として療養所を転々とし、母に会うことを怖れて隠れて暮らしていた娘と母の再会のシーンです。

​「今はもう会うのが怖くないわ。もう歳とってしまったから。」​​

​ 出征前に母が期待した「女」の人生を失った、マーシェンカの30年ぶりの帰郷​でした。​

「読んだん?」
​「ああ、原作の力かなあ、でも、漫画家さんも、よう頑張ってはるんちゃうかなあ。やっぱ、原作さがさななあ。買ったはずやねんけど。」

​ 「絵」「物語」の運びも、けっして上手とは言えないマンガですが、​2​以降もきっと読むと思いますよ。
追記2022・08・16
 ​「戦争と女の顔」というロシア映画を最近見ました。このマンガの原作の映画化でした。感想を書きあぐねていて、このマンガの案内を書いたことを思い出して、ちょっと修繕しました。
​ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ「戦争」「女の顔」を対比させて題名にしたことの深さというか、大切さというかをうつうつと考えています。
 どこの社会にも共通しているのかもしれませんが、兵士というのは死んでしまえば「神格化」して持ち上げますね。靖国がどうたら、お国のためがどうたら、行ったこともない戦場を、晴舞台でもあったかのように持ち上げる人もいます。
 しかし、捕虜になったり大けがをしたりした結果の復員は、家族や肉親はともかく、社会的には歓迎されたということをあまり聞きません。まして女性は、という問題を原作は鋭く提起していて、映画は底をクローズアップしていました。
 戦場での男性兵士の性欲の解消を、慰安と呼んで誤魔化したり正当化したりしている世相がありますが、いい加減にしていただきたいですね。戦争だからという状況が、そういう性的虐待を肯定する条件にはならないと思うんですがねえ。まあ、そんな感じで、とても映画の感想実はいけませんね(笑)​



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最終更新日  2022.08.17 08:08:53
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